2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
20111007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 誠 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (90209065)
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Keywords | 創発化学 / 自己組織化 / ナノ分子 / 多成分系 / パラジウム / 白金 |
Research Abstract |
構成する個々の成分のわずかな違いが、その違いの単純な積算としては類推できないような系全体としての違いに現れる現象が創発現象である。本研究では、このような創発現象を化学の分野で探索し、このような発想のもと、新しい化学分野を構築することをめざしてきている。本年度、48本もの配位結合が含まれる、多くの弱い相互作用が協同的に作用して1つの分子を構築しているM12L24錯体の分子システムに着目した。個々の配位結合は非常に弱いために、例えば、単座の配位子と金属イオンからなる単核錯体をモデルに用い、個々の1本の配位結合だけを調べた場合には、配位と解離を頻繁に繰り返すことがわかり、msオーダーでの配位子交換反応が進行する不安定な分子システムであることがわかった。一方で、M12L24錯体に対して、配位子の化学修飾による質量分析用のラベル化を行い、同様の配位子交換反応を調べたところ、10の5乗オーダーで元の錯体の半減期が長くなることがわかり、配位子交換は「日」のオーダーで進行する、極めて安定な分子システムであることがわかった。個々の結合は、非常に不安定で弱くても、自己組織化によって一分子内に数十という多数の結合を集積した場合には相乗的に安定化効果が発現し、容易には想像しがたい、極めて安定な分子が構築されることを実験的に明らかにすることができた。 以上の知見に基づき、弱い相互作用の共同効果を加味した、より多成分系からなる安定な分子システムの開発を目指して検討を行った。配位子の構造を精査し、構造決定を検討した結果、一気に2倍の量の配位結合を持つ、96本もの配位結合が一分子に集結したM24L48錯体の構築が可能であることを見いだした。
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Research Products
(7 results)