2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
20111007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 誠 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90209065)
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Keywords | 自己組織化 / 有機金属錯体 / 共有結合 / 創発化学 / 遷移金属 / パラジウム |
Research Abstract |
本研究は、単純な数十~数百個の構成成分から一義構造ナノスケール物質群の構造と機能を創発し、本領域研究の基盤技術を確立することを目的とする。自然界では数百にもおよぶ成分から安定な一義構造が自己集合するのに対し、人工系では10-30成分の一義構造自己集合が達成されているにすぎない。そこで、この壁を超える手法として「配位結合を活用する自己集合」に着目し、30成分を超える自己集合による一義構造を持つ分子の構築法の開発と、自己集合機構の解明をめざした。 本年度、人工的に巨大な球構造を、世界最多72成分の自己組織化によって100%の効率で作り出すことに成功した。原料として、2つの配位部位を持つ折れ曲がった配位子(L)と、平面四配位をとる遷移金属イオン(M)とを用い、これらが配位結合を余すことなく形成し対称性の高い錯体分子を形成すると考えた場合、幾何学的な考察からMnL2n組成(n=6,12,24,30,60)の不連続な限られた構造だけができることがわかる。今回、精密な配位子の分子設計を行ったところ、合計72成分からなるM24L48組成の錯体が得られることがわかった。この物質は、構成成分の分子構造をわずかに変化させると、あるしきい値を境として、劇的に異なるM12L24組成の一義構造に変化することがわかった。 ウイルス殻構造などの生物構造の自己組織化も同じ仕組みを利用している。ウイルスの殻は数百~数千のタンパクサブユニットが自発的に集まってできている一義構造体である。本研究の成果は、このように、ただ一つの構造だけが非常に多くの構成成分数から生成する様子を実験的に検証できた初めての例である。
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Research Products
(7 results)