Research Abstract |
生物振動子のゆらぎの大きさ,そのネットワーク構造依存性については,昨年度までに大体の結果が出揃ってはいたが,今年度中に論文を投稿し,発表した.この結果は,たえずノイズのある環境にさらされている細胞ネットワークがどのように集団として精確な活動を行うことができるのか,また,その精確度合の理論的な限界を与える. 次に,最大エントロピー法で,神経間の信号伝達を特徴づける理論を発展させた.特にこのような理論は,時間の因果性がとり扱いにくいこと,また素子数についてスケールアップを行いにくいこと,の弱点があった.我々は,素子(神経細胞など)間の結合強度が小さいと仮定し,その結合強度について漸近展開を行うことにより,体系的に素子間の信号の流れを見積もる手法を定式化した.提案手法は,人工的に発生させた神経活動を模した時系列に対しては,精度よく適用されることを数値実験により確認した.実験データへの適用が見込まれる. ハエの活動リズムを解析し,アクティブである期間とあまり動いていない期間(睡眠と見なされるものも含まれる)のそれぞれの分布を,ハエの行動の特徴量と見なして解析した.その結果,休止時の長さの分布は裾の長い分布に従い,アクティブである期間の長さは裾の短い分布に従うことがわかった。また,分布を特徴づける係数等は,ドーパミンをハエに投与することにより,休止については,より裾の短い分布になることがわかった.また,アクティブである期間の全体量はドーパミンの投与によって増加した.これらの結果は,ハエの活動や休止,さらには睡眠のリズムの定量化に対して有用な知見であると見込まれる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞ネットワーク上の振動のネットワークの基礎理論と数値計算結果について,予定通り論文を発行することができた.ハエの活動リズムの研究は,追加実験などの必要性もあってやや時間を要していたが,本年度に論文を発行する運びとなった.また,最大エントロピー法を用いて神経系内の信号の流れを特徴づけるプロジェクトに着手しているが,その結果は,次年度中に論文として発表されると見込まれる進捗度合いであるため.
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Strategy for Future Research Activity |
問題点は特には感知していない.最終年度であるので,年度内に,いくつかの継続事項となっている研究成果をまとめて論文発行することを優先事項とする.特に最大エントロピー法,ハエのデータ解析等の論文を投稿し,受理されるペースで研究を進めることを目標とする.
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