2009 Fiscal Year Annual Research Report
プラナリア有性化に伴うGSC/ニッチ・システムの誘導機構
Project Area | Regulatory Mechanism of Gamete Stem Cells |
Project/Area Number |
20116007
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 一也 Keio University, 医学部, 講師 (50360110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 緑 , 理工学部, 准教授 (00211574)
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Keywords | 配偶子幹細胞 / ニッチ / プラナリア / 有性生殖 / 無性生殖 / 生殖様式転換 |
Research Abstract |
プラナリアでは、有性個体の投餌により無性個体に卵巣、精巣、交接器官、そして卵黄腺の順に生殖器官が発達してくる。L-Trp(トリプトファン)が卵巣を発達させる有性化因子として有性個体から単離・同定され、また、D-TrpがL-Trpの約10^4から10^5倍の卵巣誘導活性があることがわかっていた。本研究では、D-Trpの作用機構の解明と卵巣以外の生殖器官も誘導することができる有性化因子(完全有性化因子)の単離・同定を目指している。 動物ではL-Trpは主に、セロトニン合成経路かナイアシンが関与するNAD合成経路の前駆物質となっている。無性個体に、セロトニン、メラトニン、ニコチン酸、ニコチンアミド、NADPをそれぞれ投与したところ、ニコチンアミドに卵巣誘導活性が確認できた。一方、D-Trpは一般にD-アミノ酸オキシゲナーゼ(DAO)により分解されインドールピルビン酸になるか、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼにより分解され、最終的にNAD合成経路に入るといわれている。無性個体にインドールピルビン酸を投与しても卵巣誘導は起こらなかった。 ヒト血球にあるGタンパク供役受容体(GPCR109B)がD-Trpの受容体として働くことが報告された(Irukayama-Tomobe et al., 2009)。GPCR109Bはナイアシン受容体としても知られている。D-Trpは直接、L-Trpの場合は代謝産物のニコチンアミドがプラナリアGPCR109Bホモログを介して、卵巣誘導に働いているのかもしれない。 今回、プラナリアDAOホモログ遺伝子を単離し、その融合タンパクがDAO活性を持つことが確かめられた。そこで、DAO特異的阻害剤である安息香酸とともにD-Trpを投与すると、まれに完全な有性化が起こることがわかった。D-Trpは、完全有性化因子の作用力の弱いアゴニストとして、プラナリアGPCR109Bホモログに働いているのかもしれない。今後は、プラナリアのD-Trp受容体を決定して、有性化現象との関与を検証する。 完全有性化因子の単離・同定のために、淡水棲有性種Bd. brunneaを用いていたが、採集地・成熟期などの制限のため量的供給が望まれなかった。今回、Bd. brunneaの約50倍(湿重量2.5kg/年)採集可能な陸生有性種Bipalium nobileにBd. brunneaと同程度の有性化活性があることがわかった。Bi. nobileを材料にして有機層に回収される有性化因子を、単離中である。
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Research Products
(9 results)