2008 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素シグナル応答機構の解明を目指した新規蛍光プローブ・イメージング技法の開発
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
20117003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浦野 泰照 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (20292956)
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Keywords | 蛍光プローブ / 活性酸素種 / 活性窒素種 / カルセイン / フルオレセイン / 細胞内滞留性 / 長時間観測 |
Research Abstract |
本研究課題は、生きている細胞内での情報伝達機構の制御分子としての活性酸素種(ROS)・窒素種(RNS)の役割を解明するべく、これらの発生をリアルタイムに検出する蛍光プローブ類の開発を行うことを目的とする。そこで本年度はまず、細胞質中で発生するROS, RNSを高感度に検出する蛍光プローブの開発を行った。筆者らはこれまでに、フルオレセインを分子骨格とするROS, RNS蛍光プローブであるAPF類、DAF類をそれぞれ開発することに成功してきたが、これらの蛍光プローブ類は比較的細胞内からの漏出が激しいため長時間の観察ができず、またプローブ濃度の減少による感度の低下が指摘されていた。そこでより細胞内滞留性を向上させるべく、分子骨格としてカルセインを採用した蛍光プローブの開発を行った。カルセインはフルオレセインにさらにカルボキシ基が4つ多く導入されている構造をしており、事前の検討から細胞内滞留性が極めて高く、またフルオレセインとほぼお同じ還元電位、励起・蛍光波長を有するため、ほぼ同じ光誘起電子移動の原理に基づきプローブの開発が可能であることが明らかとなった。そこで実際にAPF, DAFの分子骨格をカルセインとしたAPC, DACal類を合成し、その蛍光特性を精査した結果、まずそのROS, RNSプローブとしての機能はAPF, DAF類とほぼ同等であることが確かめられた。さらに生細胞に負荷して長時間観測した結果、細胞内からの漏出は極めて低く、狙い通り細胞内滞留性の高い蛍光プローブであることが明らかとなった。最後にAPC負荷したHL60細胞、DACal負荷したBAEC細胞を用いて、薬物刺激によるROS, RNSの検出を試みたところ、従来のプローブでは検出不可能であった低容量刺激でもその発生を検出可能であり、また1時間を超える長時間観測を行っても、その感度の低下がほとんど見られないことが明らかとなった。このように本プローブ類は今後のROS, RNS研究に大きな貢献をもたらすものと期待される。
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