2011 Fiscal Year Annual Research Report
化学プローブを駆使した活性酸素シグナルの制御機構解明
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
20117006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有本 博一 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (60262789)
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Keywords | 一酸化窒素 / 内因性物質 / ケミカルバイオロジー / ニトロ化 |
Research Abstract |
本年度は以下の3項目について研究を進めた。 1.8-ニトロアデノシン誘導体の生体内存在の探索;2.8ーニトロcGMPが結合する標的タンパク質の解明;3.S-グアニル化シグナルをOFFにする機構の解明 このうち、1については、既に合成した各種の8-ニトロアデノシン誘導体をもとにしてポリクローナル抗体を作成し、細胞免疫化学やウェスタンブロットを利用して、生体内存在を調べた。存在が示唆される結果を得ているが、微量物質であるため、更なる検証が必要と考えられた。2については、蛍光標識プローブを作製して電気泳動ゲル上に標的タンパク質を見出し、質量分析を行ったが、完全な同定にはいたらなかった。蛍光プローブを認識する特異的抗体が有用と考えられたので、作成を試みたが充分な特異性をもつ抗体が得られていない。3については、酸素の安定同位体を含む8-ニトロcGMPを化学合成し、これを培養細胞に投与して代謝物を解析した。その結果、細胞内に過剰に存在する8-ニトロcGMPは、還元を受けて8-アミノ-cGMPへと変換されることがわかった。8-アミノ-cGMPは、合成化合物として以前報告があったが、内因性物質としての存在が確認されたのは、これが始めてである。この8-アミノ-cGMPは、炎症を起こした細胞のなかでは更に代謝され、cGMPへと変換されることも判明した。ニトロ化ヌクレオチドが、無修飾のヌクレオチドへ戻され再利用される過程を明らかにしたもので大変価値が高いと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の化学プローブを駆使することに依って、研究開始当初まったく明らかになっていなかったニトロ化ヌクレオチドの生成と代謝過程について、有用な知見が蓄積されている。これは、活性酸素シグナル領域内でケミカルバイオロジー分野を担当する本研究代表者に期待される役割を充分に果たしていると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度までの研究に依って、8-ニトロ-cGMPが持つ新たな生理機能が明らかになりつつある。24年度には、その機能が発現するメカニズムの解析に重点をおいて研究を進めたい。
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Research Products
(4 results)