2008 Fiscal Year Annual Research Report
内皮由来弛緩因子としての活性酸素の役割と作用機構の解明
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
20117009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下川 宏明 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 教授 (00235681)
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Keywords | 一酸化窒素合成酵素(NOS) / 内皮由来過分極因子(EDHF) |
Research Abstract |
内皮由来弛緩因子には3種類あり、プロスタサイクリン(PGl_2)・一酸化窒素(NO)は既に同定されているが、第3の因子である内皮由来過分極因子(Endothelium-derived hyperpolarizing factor, EDHF)の本体は不明であった。我々は、「内皮型NO合成酵素(eNOS)から生理的に産生される過酸化水素(H_2O_2)がEDHFの本体の一つである」ことを世界に先駆けて同定し、さらに、NOとEDHFとの間には血管径による明らかな役割分担があり、種差や血管床の如何に関わらず、NOはより太い血管で、EDHFは微小血管で重要な働きをしていることを明らかにしている。 今回我々は、neuronal, inducible, endothelial NOSを欠損したn/i/eNOSトリプルノックアウトマウス、n/eNOSダブルノックアウトマウス、eNOSシングルノックアウトを用い、腸間膜動脈におけるEDHFによる弛緩反応および過分極反応は、ノックアウトされたNOS遺伝子の数に比例して有意に低下し、NOSsトリプルノックアウトマウスでは、完全に消失することを発見した。これは、血管内皮において、eNOSが欠損しても他のアイソフォームが代償的に働くこと、同じNO合成酵素系が血管径により全く異なる役割を果たしていることを初めて示唆するものである。 また、内皮にはNOS以外にスーパーオキシドを産生する酵素があり、これらの酵素の阻害剤を用いて腸間膜動脈におけるEDHFによる弛緩反応および過分極反応を調べたが、変化を認めなかった。よって、eNOSが、大血管(導管血管)においてはNO合成酵素として働き、微小血管(抵抗血管)においてはEDHF/H_2O_2合成酵素として働くこの役割分担には、血管内皮の他の酸化酵素系は関与していないことが明らかになった。
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Research Products
(3 results)