2010 Fiscal Year Annual Research Report
内皮由来弛緩因子としての活性酸素の役割と作用機構の解明
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
20117009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下川 宏明 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00235681)
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Keywords | 活性酸素 / 一酸化窒素合成酵素 / Rho-kinase / メタボリックシンドローム / 臓器関連 |
Research Abstract |
血管内皮は、内皮由来弛緩因子(EDRFs)と総称される数種類の弛緩因子を産生・遊離し、心血管系の恒常性の維持に極めて重要な役割を果たしている。EDRFsの主な因子として、prostaglandin I2 (PGI2),一酸化窒素(nitric oxide, NO),内皮由来過分極因子(EDHF)があり、我々はEDHFの本体(の一つ)が内皮から生理的濃度で産生される過酸化水素(H2O2)であることを同定した。また、興味深いことに、内皮NO合成酵素(NOSs)系がNOとH2O2の供給源になっていた。このような背景を受けて、本研究では、EDRFsとしての活性酸素種(NO,H2O2)の役割と作用機構の解明を目指す。具体的には、下記の3つの目的を設定した。研究は順調に進行している。以下のような知見が得られつつある。 研究1:NOSsの血管反応性における生物学的多様性の分子機構の解明 NOSs系が、太い血管では主としてNO合成酵素系として機能しているのに対し、微小血管では主としてH2O2産生系として機能しているという、際だった多様性を有することを明らかにした。この血管径による顕著な機能の相違に関して検討を行ったところ、微小血管において血管内皮のCaMKKβおよびCaveolin-1(Cav-1)によるNOSsの抑制が重要な役割を果たしていることを見出した。 研究2:NOSs/Rho-kinase経路の臓器連関における生物学的多様性の解明 NOSs完全欠損マウスでは全身的な完全なNO欠損により、我々が炎症惹起分子として明らかにしたRho-kinaseの活性化が生じていることを明らかにした。また、炎症性の異常は、心臓だけではなく、腎臓・肝臓など、他臓器にも認められることを確認した。 研究3:NOSsの代謝調節における生物学的多様性の解明 NOSs完全欠損マウスでは、耐糖能障害をはじめとしたヒトにおけるメタボリックシンドロームに近い代謝性障害が生じていることを明らかにした。また、選択的Rho-kinase阻害薬の慢性投与により、これらの代謝異常が是正されうることが、現在、明らかになりつつある。
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