2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
20118002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松林 伸幸 京都大学, 化学研究所, 准教授 (20281107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 千尋 京都大学, 化学研究所, 助教 (40293948)
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Keywords | ATP / 自由エネルギー / 水和・溶媒和 / 分子シミュレーション / エネルギー表示 / 加水分解 / 分布関数 / 基質結合 |
Research Abstract |
エネルギー表示法を用いてタンパク質の溶媒和自由エネルギーを計算した。300Kの平衡状態における水中のタンパク質の全原子MDシミュレーションを行い、タンパク質の立体構造を揺らがせ、1 nsごとに構造を取り出した。次に、取り出したタンパク質の構造を固定して水だけを動かすMDシミュレーションを行った。サンプリングした水の配置からエネルギー分布関数を作成し、それを溶媒和自由エネルギー汎関数に代入することで、固定した構造の溶媒和自由エネルギーを算出した。対象とするタンパク質としてhorse heart cytochromeo cを用い、水はTIP3Pとした。溶媒和自由エネルギーを、タンパク質分子内エネルギーに対してプロットすると、互いに補償関係にあることが見出された。これは平衡揺らぎの微小な構造変化では、全系の自由エネルギーの大幅な変動や、一方向に動くことがないことを意味する結果である。分子内エネルギーの揺らぎは300kcal/molと水素結合の数十個分もの大きさになる。真空中ではこのような大きな変化が起こることはないが、溶液中では周りの溶媒により補償されることがわかる。次に、溶質-溶媒間に働く相互作用の引力項と斥力項が溶媒和自由エネルギーに与える影響を調べた。溶質-溶媒間相互作用の平均和は、溶媒和自由エネルギーに対し、傾き1/2で線形に変化する。これに対して、溶媒和自由エネルギーの排除体積項は、ほぼ一定であった。このことから、溶媒和自由エネルギーが線形応答的に変化するタンパク質-水間相互作用の引力項と、ほぼ一定の値をとる斥力項の和で表現できることがわかった。
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