2009 Fiscal Year Annual Research Report
溶媒和ダイナミクスの計算手法開発とATP加水分解過程への応用
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
20118003
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高橋 卓也 Ritsumeikan University, 生命科学部, 准教授 (70262102)
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Keywords | 水和 / MD / QM / ハイパーモバイル水 / ダイナミクス / 水モデル / ATP加水分解 / イオン |
Research Abstract |
ATP加水分解反応のミクロ過程の解明につながるリアルな分子モデルを開発するため、生体分子の構成要素となる様々な官能基をもつ低分子、アミノ酸などに対して量子化学計算を行った。ATPのモデル分子としてモノリン酸、2リン酸、3リン酸に関して荷電状態を変えてSPCIEモデルで、古典的MD(CMD)により、水の拡散係数および回転緩和時間を計算した。電荷が-1~-2の状態において第一水和層内で、前回の剛体モデル同様、バルク水より拡散係数が高く回転緩和時間が短い水(ハイパーモバイル水)が見出された。一方、モノリン酸(H_3PO_4,H_2PO_4^-,HPO_4^<2->,PO_4^<3->,)と数十個の水分子のクラスターの系で、上のCMDでサンプルした構造に対して量子化学計算を行った。その結果、リン酸の電荷が0の場合(H_3PO_4)には水のダイポールモーメントがバルクのときとほぼ等しいが、マイナスの電荷が大きくバルクより速い水が見出される領域ではダイポールが小さくなり、PO_4^<3->では再びバルクに近いダイポールモーメントであることがわかった。純水のSPCIEの系でのCMD計算により、ダイポールモーメントが1%小さい水では拡散係数が20%も上昇することがわかっているので、荷電したモノリン酸イオン周囲の水の運動性の上昇と相関があることが見出された。タンパク質の構成要素であるアミノ酸を溶質とするCMDの結果、水和水のダイナミクスを溶質の電荷や疎水性によって説明できることがわかった。また分極効果を取り入れた3点モデルでは単原子イオンに関して実験を定性的にも再現することができなかったが、TIP5P水モデルを改良することで可能となった。また開発した溶媒に関する計算手法をタンパク質結晶の系にも適用した。
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Research Products
(6 results)