2011 Fiscal Year Annual Research Report
溶媒和ダイナミクスの計算手法開発とATP加水分解過程への応用
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
20118003
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高橋 卓也 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70262102)
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Keywords | 水和 / MD / QM / ハイパーモバイル水 / ダイナミクス / 水モデル / ATP加水分解 / イオン |
Research Abstract |
ATP加水分解過程にともなう水和水の動的な性質変化とタンパク質自体のダイナミクスや機能の間の相互作用の解明のため、加水分解の各ステップにおいて系のダイナミクス変化を記述する各種関数を計算し、タンパク質の有無で比較した。また平衡論的な自由エネルギーという視点だけでなく力学的な視点からの溶質と溶媒の相互作用を明らかにするために最適な水分子および溶質分子モデルを開発、し様々な溶質周囲の水分子のダイナミクスに関して、実験結果の再現、特に運動性が通常の純水中よりも速い水(ハイパーモバイル水HMW)の立証と物理的メカニズム解明を目指した。去年は単原子イオンを中心だったが、H23ではポリリン酸分子を中心に、より大きな溶質分子に対して網羅的に計算を行った。これまで様々な既存の水モデル(TIP系、SPC系、POL3)とイオンパラメタの組み合わせを検証し、POL3のような分極モデルでもHMWが再現できないことが確認できた。そこでTIP5Pモデルを修正した新たな水モデルを開発し、これまで再現できなかった単原子分子イオン周囲でもHMWを再現できるようになった。このときの低分子周囲での水分子の速い動きの原因となる相互作用を解明した。次にタンパク質の構成要素である20種類のアミノ酸周囲のMD計算を行い、分子量と疎水性指標によって、そのダイナミクスが説明できることがわかった。さらにタンパク質など巨大分子での計算を高速に行うための計算手法を発展させ、分子間相互作用の定量的な評価を行えるようになった。課題として、現在の解析は、自己相関の計算による並進拡散係数や回転緩和時間の計算のみを行っており、相互相関を取り入れていないため、誘電緩和スペクトルの計算のためには、新たに解析ソフトを作成して計算し直す必要がある。またモデルの最適化問題、さらに溶質分子量が大きくなるほど、誘電緩和実験とMD計算の間でダイナミクスに違いが生じることなどが残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの解析法に、問題がある可能性が明らかになり、その再検証や、計算のやり直しが発生した。また博士研究員が、なかなか定着せず、マンパワーの不足が教育コストや論文作成の効率を低下させている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に解析ソフトウェアの作成を行いつつあり、それによる解析計算のやり直しを、行う。計算機能力を増強しているので、計算コストを下げられる予定である。
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Research Products
(6 results)