Research Abstract |
本年度は,各種極限環境微生物からATPase活性のある画分を調製し,F1-ATPase酵素精製に取り組むとともに,城所俊一博士(長岡科学技術大学生物系)との共同により,ATPase活性および関連するリン酸転移活性に伴う熱測定を実施した。具体的な成果は,以下の通りである。 (1)好熱菌Hydrogenophilus thermoluteolus由来のF1-ATPase:本菌菌体よりF1-ATPaseが存在する膜画分を調製し,活性の最適条件を検討した。その結果,本ATPase活性は65℃で最大となり,二価カチオンとしてマグネシウムの他,カルシウムを必要とすることが明らかになった。さらに,C12E8により膜から本酵素を可溶化し,各種カラムクロマトグラフィーにより精製することに成功した。 (2)好冷菌Shewanella violacea由来のF1-ATPase:本菌菌体よりF1-ATPaseが存在する膜画分を調製し,活性の最適条件を検討した。その結果,本ATPase活性は30℃で最大となり,二価カチオンとしてマグネシウムを必要とすることが明らかになった。さらに,C12E8により膜から本酵素を可溶化し,各種カラムクロマトグラフィーにより精製度を10倍にすることに成功した。 (3)好塩菌Haloarcura japonica由来のATPase:本菌菌体よりATPaseが存在する膜画分を調製し,活性の最適条件を検討した。その結果,本ATPase活性は,37℃において2Mの硫酸ナトリウム存在下で発現することが明らかになった。同条件下でATp分解に伴う熱測定を実施し,反応熱を約30kJ/molと見積もることができた。さらに,本菌可溶性画分にはピロフォスファターゼ活性があることを突き止めた。活性発現には2Mの塩化ナトリウムが必要であり,この条件下での活性の熱測定にも着手した。
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