2011 Fiscal Year Annual Research Report
ATP加水分解およびATP駆動タンパク質のエネルギー・水和状態相関解析
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
20118008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 誠 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60282109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 展行 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (00313263)
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Keywords | ATPエネルギー / タンパク質の水和 / ATP加水分解反応 / 誘電緩和分光 / 水和 / 溶媒和 / リン酸の水和 / ハイパーモバイル水 |
Research Abstract |
研究の目的:ATPの加水分解エネルギーの物理的実体を解明するため、ATP分解にともなう水の動的状態の変化を調べる。本研究では、ハイパーモバイル水(HMW)を軸にした水和の分子論を展開する。具体的には、誘電緩和法によるATPおよびその加水分解産物(AD)Pなどの水和特性を測定し、HMWを含め水和各成分の量的比率を求める。アクチンおよびミオシンの水和状態の特性を誘電緩和法による回転緩和情報とパルス磁場勾配スピンエコー(PFG-SE)NMRによる並進拡散係数から明らかにし、アクトミオシンによるATP加水分解過程の水和特性変化を評価する。また、ATP加水分解過程の反応熱を実験的に再検討すること。 研究実施内容:(1)誘電緩和分光、PFGSE-NMRによるアクトミオシンの水和状態解析 水和状態(拘束水量とハイパーモバイル水量というこれまでにない2元の水和情報)の変化を誘電緩和分光法で明らかにした。ミオシンS1が結合するときの水和状態の変化、ヌクレオチド存在時のミオシンの水和状態の解析を通じて、ATP加水分解過程における水和特性を測定した。現在付随的な信号要因の検討を行っている。(2)滴定熱量測定によるミオシンとヌクレオチド結合熱の測定を行い、共溶媒(尿素)の影響として結合エンタルピー増大作用を検出した。(3)ATP加水分解過程のステップであるアクチンとミオシンの結合反応熱について、滴定熱量測定と追加配分によるDSC測定を組み合わせて行った。さらに、ハイパーモバイル水の反応熱への寄与を知るためDSCを導入し、ハイパーモバイル水の量が大きく変化する遷移現象(アクチンの重合反応等)をアクチン一定溶液状態で温度を変えることで、溶質の水和状態を変化させる際の熱の出入りを調べている。吸熱現象と溶液の比熱の変化が重なっていることを示唆する結果について検討を進めている。 これらの誘電緩和分光とPFG-SE NMRおよび熱測定の結果をもとに、領域内研究者(松林、秋山ら)と共同で、水和状態測定結果に対して検討を進め、自由エネルギー変化の内部構成を検討している。その結果、本研究の目標である水の特性変化の物理的描像として、荷電粒子周りの水の分極応答について統計物理学的理解が進展してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大震災後の研究室環境は平成24年1月にようやく通常実験が可能な状態に復帰してきた。水和測定装置の故障修理等も重なり、測定がやや遅れてはいるが、なんとか予定した実験を行うめどがついている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に予定していて、震災後の復旧に時間をとられやや遅れている実験項目を24年度にもりこんで、当初設定した本研究の目標を実現する。 また、領域内共同研究で新たな進展が見えてきた、秋山・松林との統計物理学的水和状態の物理描像の構築を24年度に予定する。
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Research Products
(34 results)