2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Coral Reef Science for Symbiosis and Coexistence of Human and Ecosystem under Combined Stresses |
Project/Area Number |
20121002
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
日高 道雄 琉球大学, 理学部, 教授 (00128498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 彰英 琉球大学, 教育学部, 教授 (60273265)
山城 秀之 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 教授 (80341676)
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
中村 崇 琉球大学, 理学部, 講師 (40404553)
磯村 尚子 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 助教 (90376989)
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Keywords | サンゴ / ストレス応答 / 共生 / 褐虫藻 / チオレドキシン / 環境ストレス / 遺伝子発現 / ストレスマーカー |
Research Abstract |
本研究では、生殖様式や褐虫藻獲得様式などの生活史特性の異なるサンゴ種の、様々な生活史段階における単独および複合ストレス応答を調べることを目的とした。また同種内でも遺伝子型や生息環境によってストレス応答が異なる可能性を検討した。 高温ストレス下でサンゴ幼生のストレス応答関連遺伝子の発現が最初上昇するがその後低下するという二相性を示すことを見出した。遺伝子発現のストレス応答を調べる際には、ストレスの強度と処理時間の最適化が必要である。 抗サンゴチオレドキシン抗体を用いたウェスタンブロットにより明確なバンドを得ることができ、今回作成した抗体が特異性を持ち、チオレドキシン定量に有効であることが示唆された。酸化型および還元型のチオレドキシンを定量することにより細胞内酸化ストレスマーカーを開発する道が開かれた。 サンゴ2種の幼生と成群体で呼吸の温度依存性を調べたところ、幼生は成群体に比べてQ_<10>(温度依存性を示す値)と呼吸速度のどちらも低く、幼生はエネルギー消費を抑えて高温ストレス耐性を高めている可能性が示唆された。 高温ストレス処理したサンゴ幼生では、アポトーシス細胞死の頻度が皮層よりも褐虫藻を含む胃層で高く、ストレス下で褐虫藻により産生された活性酸素が宿主細胞のアポトーシスを起こしている可能性が示唆された。 サンゴにとって新たな生物ストレスとなる付着性微生物のサンゴ表面への付着機構と環境との関係について調べた結果、環境変化(栄養塩濃度や低温ストレス)との関連が示唆された。土壌成分の多い環境に生育するサンゴで骨格内に取り込まれた微量元素含有量にFe,Al,Crの濃度が高いという特徴を見出した。異なる環境へ移植したコユビミドリイシの成長速度に遺伝子型による差異があることを明らかにした。高濃度の栄養塩存在下では、褐虫藻の光合成低下を伴わない組織剥離などの異常が起こることを実験的に確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関連する論文を国際誌に7編発表し、本研究班のメンバー2人は、サンゴ礁学の最前線の研究成果を紹介する「サンゴ礁学-未知なる世界への招待-」の一部を執筆した。遺伝子発現解析および細胞内酸化ストレスマーカーの開発は、ポスドク研究員の異動があり若干遅れたが、研究体制を建て直した。冬場の海水温低下によるサンゴ壊死という新規現象があり追加研究に加えた。サンゴ遺伝子型によるストレス耐性の差、海域の栄養塩動態の把握、生息環境に特徴的なサンゴ骨格内微量元素パターンなど新しい知見を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
呼吸と光合成の温度依存性を求め、ストレスによりエネルギー収支がマイナスに転じる条件を求め、エネルギー収支の観点からサンゴのストレス耐性を説明できるか検証する。酸化型および還元型のチオレドキシンを別々に定量する方法を開発することにより、細胞内酸化ストレスの定量化を行い、異なるストレスの強度や持続時間の影響を共通の指標を用いて解析できるようにする。イオウを介したサンゴと褐虫藻の協調的ストレス防御モデルを、遺伝子発現解析に基づいて提唱したい。サンゴ群集の回復力の生態学的調査を継続し、親サンゴと加入した幼サンゴの遺伝子解析によりサンゴ幼生の分散力と群集の回復力の関係を明らかにする。異なる環境に生息するサンゴの褐虫藻の微量元素組成を解析する方法を確立する。最終年度であるので、成果を論文としてまとめる。
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Research Products
(43 results)