2020 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによるタンパク質化学反応ダイナミクスの解明
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
20H05453
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮下 治 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 上級研究員 (10620528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 光男 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (00593550)
篠田 恵子 東京大学, 生物生産工学研究センター, 特任助教 (80646951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子古典混合計算 / 化学反応解析 / シミュレーション / ハイブリッドアプローチ / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では量子古典混合計算による化学反応解析や、高精度力場を用いた大規模長時間シミュレーション、実験データとシミュレーションを融合させるハイブリッドアプローチなどの多角的な理論計算研究アプローチを用い、高速分子動画法による実験データを活用しながら、反応の時間・空間・エネルギーに関する詳細な情報を得ることで、タンパク質の動的構造変化と化学反応機構を解き明かすことを目的とする。 時間発展前後の電子密度の差を反映する差フーリエマップをもとに、MDシミュレーションを用いることで反応後の構造モデルを導き出す手法を開発した。ロドプシンの実験データについても実証研究を行った。他に、構造データベースを活用してXFELデータから構造を推定する手法や、データから構造モデリングを行う手法を開発した。 バクテリオロドプシンが存在する高度好塩菌膜で多数を占める分岐鎖エーテル型脂質や結晶構造で観測された直鎖脂肪酸を模倣した直鎖エーテル型脂質のMD力場の開発を行った。そして、これらを用いて古細菌モデル膜をモデリングし、バクテリオロドプシンのMDシミュレーションを行った。光励起前構造と励起後16nsを比べた場合、レチナール分子や周辺の残基のダイナミクスや水の分布の違いが明らかになった。 C-PCのフィコビリン色素の励起状態構造変化を理論解析し、側鎖プロピオン酸が励起状態の構造変化を制御することを明らかにした。CAOのプロトン化状態について理論解析し、Asp298残基がプロトン化していること、回転自由度を持っていることを見出した。サルコシンオシキダーゼはシクロプロピルグリシン基質においてpolor機構を取ることを解明した。代替酸化酵素非ヘム鉄酵素において基質結合解析を行い、酸素結合はエンドオン型であることを示した。コンフォメーション自由度がある場合、X線構造は平均構造になる経験則を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
QM/MM解析については計画以上の連携研究によるタンパク質の反応の理論解析が進んでおり、また、MDシミュレーションによるバクテリオロドプシンの運動解析や構造モデリング手法の開発も大体計画通りの研究が進んでいるから。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に基づいて、領域内での連携を推進しつつ今後の研究を進めていく。 1)開発している時分割SFXにより得られる実験データから構造モデルを分子動力学シミュレーションを活用して半自動的に構築するための手法の高度化を進める。まず、MDを用いた実空間でのモデルフィッティングに加えてX線結晶解析で行われる構造精密化の手法を組み合わせることでデータからの正確なモデリングを行えるツールを開発する。さらに、実験グループが活用できるようにソフトウェアの整備を進める。そして、時分割SFXのデータから反応に伴い進行するタンパク質の構造変化を描画する計算分子動画法を開発する。 2)大規模MDシミュレーションによるバクテリオロドプシンの機能理解。SFXで得られた結晶構造のうちまだ計算していない系について、レチナール分子周りのプロトン移動に関わるアミノ酸のプロトン化の有無も考慮しモデリング、MDシミュレーションを実施する。SFXで得られた異なる観測時間結晶構造間のダイナミクスの変化、特にK状態の構造の系とL状態の構造の系のダイナミクスの変化を詳細に解析する。 3)QM/MM法によるタンパク質化学反応の理論解析。新規SFX構造には、特殊な構造や解釈の難しい構造変化が多く存在するため、その議論にはQM/MMによる理論解析が極めて重要になることが分かってきた。実験課題との共同研究を進めていく。具体的には、(I)銅含有アミン酸化酵素のセミキンラジカル生成機構、(II) C-ピコシアニンの光励起構造変化、(III) 2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼの位置選択的反応機構、(IV)ヘリオロドプシンに結合している亜鉛イオンの役割、(V)レゾチームに結合したMn錯体の光分解過程、(VI)ヘムの配位構造とラマン振動帰属について理論解析を進める。新しい連携研究課題についても積極的に取り組む。
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Research Products
(23 results)