2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Next-generation non-invasive biological deep-tissue manipulation by biomolecular engineering and low physical energy logistics |
Project/Area Number |
20H05757
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 博臣 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20422545)
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Project Period (FY) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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Keywords | 色素タンパク質 / オプトジェネティクス / 蛍光タンパク質 / 温度生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
色素タンパク質に温度感受性の高い蛍光タンパク質であるSiriusを融合させて細胞内に発現させ、色素タンパク質が吸収する光を照射しながら同時にSiriusのシグナル変化を測定することにより、色素タンパク質から光熱変換によって放出される熱を検出した。色素タンパク質としては、GFPファミリータンパク質であるShadowRおよびバクテリアのフィトクロムから開発されたmiRFP720を用いた。この実験から、2つの点が明らかとなった。まず、miRFP720はSiriusの蛍光シグナル変化を惹起するほどの熱を発生できなかった。他の観察からこの原因のひとつはmiRFP720が極めて速やかに光退色するためだと考えられた。第二に、N末端9残基のアミノ酸を欠失したShadowRと融合したSiriusの蛍光が不可逆的に抑制された。おそらく過剰なN末端の欠失によって、現時点では説明できない理由によって融合相手のSiriusを不活性化したものと考えられた。 次に、ShadowRをラット由来TRPV1チャネル(rTRPV1)のループ部分にShadowRを融合したコンストラクトを5種類作製した。この融合タンパク質を動物細胞に発現させて局在を調べたところ、rTRPV1のC末端のdisorderされた部分へShadowrを挿入したもの以外は、細胞質への局在が観察できなかった。細胞膜へ局在が見られた唯一のコンストラクトを発現する細胞へShadowRが吸収する光を照射したところ、微弱ではあるが細胞質カルシウムイオン濃度の上昇が観察された。これらの結果は、光熱変換による細胞操作の可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
色素タンパク質とTRPV1を融合させたツールを作製したものの、期待したほど大きなカルシウムイオン濃度変化を達成できていない。また、新たな色素タンパク質の開発が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
【実施計画1】 タンパク質ヒーターの性能の検証 色素タンパク質と温度感受性蛍光タンパク質の距離を変化させ、光を照射した際の融合タンパク質の温度上昇とタンパク質間の距離の関係を調 べる。また、リンカーとなるアミノ酸配列と熱の伝わり方の関係を調べる。 【実施計画2】 指向性進化による新規高性能タンパク質ヒーターの創出 前年度から引き続き、光を高効率で熱に変換する新規色素タンパク質を創出する。mCardinalなどの遠赤色領域に吸収を持つGFPファミリー蛍光タンパク質、およびmiRFP720などビリベルジンを蛍光団として持つ近赤外蛍光タンパク質のcDNAをテンプレートとしてランダムPCRをおこない、変異が入ったcDNAのライブラリを得る。形質転換した大腸菌の蛍光とコロニーの色をプレート上で評価する。強い色を有するにも関わらず 蛍 光が弱いコロニーを培養してcDNAおよび蛍光タンパク質を得る。精製した蛍光タンパク質については分光特性を確認する。得られたcDNAを テン プレートとして再びランダムPCRをおこなうサイクルを繰り返す。 【実施計画3】 光熱変換を利用した細胞操作ツールの開発 熱感受性イオンチャネルであるTRPVの様々な部位に色素タンパク質を融合して細胞内に発現させ、光熱変換によってイオンチャネルの制御を試 みる。
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