2021 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠動物の概日時計の分子機構:カルシウムを基軸とした低温リズム発振機構の解明
Project Area | Mammalian hibernation biology ~ survival strategies via hypometabolism and hypothermia |
Project/Area Number |
20H05769
|
Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
榎木 亮介 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 准教授 (00528341)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 尚宏 名古屋大学, 生命農学研究科(WPI), 特任講師 (80822931)
|
Project Period (FY) |
2020-10-02 – 2023-03-31
|
Keywords | 概日時計 / 温度補償性 / カルシウム / 時計遺伝子 / 冬眠/休眠 / 低温応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の冬眠の開始や終了、中途覚醒のタイミングには時刻依存性があることが古くから知られており、概日時計中枢は低温でもリズムを継続すると推察されていた。しかしながら、冬眠中の時計遺伝子の転写振動の有無に関しては研究グループごとに見解が分かれており、長く議論が続いている。従来の解析法では、組織のサンプリング時間ごとに多数の個体を用いて解析しており、概日リズム解析の精度を著しく低下させる可能性が指摘されている。さらに概日時計は、何千もの遺伝子のリズムを生み出していることから、冬眠時の概日時計の挙動を理解する上で「時計機能を評価する本質的なリズム指標は何か?」が長らく議論となってきた。本研究課題では、冬眠動物における振動メカニズムをカルシウムイオンを基軸に明らかにすることを目指して研究を行っている。 これまでに、温度制御が可能な恒温恒湿器内に低温計測顕微鏡システム一式を設置し、様々な低温条件で視交叉上核の培養スライスのタイムラプス光計測を行う方法を確立し、概日時計の低温/復温応答を計測することを可能とした。また研究分担者の金は、休眠導入や各臓器の低温耐性への低温性シグナリングの役割を明らかにすることを目指し研究を行い、これまでに概日リズムの温度補償性にはNa+/Ca2+交換輸送体を介するカルシウムシグナルが関与することを発見した。現在はさらに化合物スクリーニングを用いた培養細胞レベルで低温性応答の評価を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
低温下で概日時計中枢の培養スライスのリズムを高精度で長期間光イメージング計測できる実験系を確立した。その結果、概日時計の低温応答と復温応答にカルシウムイオンが重要であることを見いだしている。当初は予期しなかった概日時計発振のメカニズムに迫るデータを得ており、当初の計画よりもはやく研究が進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに低温イメージング計測系の立ち上げ、低温応答性リズムの発見、ハムスターの冬眠誘導とin vivo計測の準備など、順調に研究が進んでいる。早期の論文化を目指して堅実にデータを積み重ねてゆく計画である。
|
Research Products
(16 results)