2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Lifelong sciences: Reconceptualization of development and aging in the super aging society |
Project/Area Number |
20H05801
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
寺本 渉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (30509089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 聡太 立教大学, 現代心理学部, 教授 (40581161)
川越 敏和 東海大学, 文理融合学部, 特任講師 (70786079)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 異種感覚統合 / 加齢変化 / 補償 / 注意 / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者においては、一見すると若年者と同様に維持されているように見える負荷の低い処理、自動的かつ無意識的処理であっても、その背後には衰えた心的機能を補償する別のプロセスが働いている可能性がある。本研究ではそのような機能の存在を確認し、補償される機能と補償されない機能、補償の最適条件や仕組み等を検討することによって、高齢者の知覚・認知の特性を正しく捉えなおし、その可塑性を最大限に引き出す最適な方法を見いだすことを目的としている。特に,日常の基礎をなす知覚情報処理過程である【A】選択的注意、【B】プライミング及び【C】知覚学習の自動的かつ無意識的な側面を主たる対象として検討を行っている。 第3年度である本年度は,視覚と体性感覚との異種感覚相互作用の加齢変化について詳細に調べた。まず,自分の身体とみなされる空間範囲である身体近傍空間が高齢者で若年者よりも拡大していることを明らかにした。次に,静止観察時の姿勢の不安定さが隙間の通過可能幅知覚に及ぼす影響を調べた。その結果,若年者に関しては姿勢の不安定さは通過可能幅知覚に全く影響を及ぼさなかったが,高齢者は不安定な姿勢の条件では知覚的通過可能幅は拡大していた。通常,知覚的通過可能幅は肩幅の1.3倍程度であり,静止観察時には(実際に通過していないので)肩幅と隙間との関係のみによって決定されると考えられ,若年者の結果はそれに一致する。一方,高齢者はオンラインの姿勢情報をも利用しており,身体近傍空間の結果も踏まえると,予め安全マージンを広くとっているか(補償),あるいは不必要に多くの感覚情報を利用して行動を決定している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,期間延長はしたものの長期にわたって対面での高齢者実験が制限されたため,当初計画よりも「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
【A】選択的注意、【B】プライミング及び【C】知覚学習のいずれについても自動的かつ無意識的な側面の加齢変化とその変化を補償する条件を明らかにしていく。また,顕著な加齢変化や補償が見出された現象に関しては脳波計測等により神経機序も明らかにしていく。
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