2021 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological study on the acquisition of skills, improving proficiency and sharing of tacit knowledge
Project Area | Lifelong sciences: Reconceptualization of development and aging in the super aging society |
Project/Area Number |
20H05806
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 守恵 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 准教授 (10402752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山越 言 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (00314253)
伏木 香織 大正大学, 文学部, 教授 (30436696)
座馬 耕一郎 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (50450234)
重田 眞義 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任教授 (80215962)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 技能 / 習熟 / 身体技法 / アジア / アフリカ / 職能集団 / 音楽 / 評価尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジアやアフリカのさまざまな地域において、技能集団が身体技法を習熟する過程(=技能を獲得・熟練させる一連の過程)を記述した上で、その過程と生物学的発達との相関性を検証しながら、多様な社会システムにおける文化的発達の制度化を描きだすことを目指す。観察データによって得られた身体動作(民族動作)と動作のつながり方の特質や、当事者や周囲のアクターによる技能の習熟や低下に対する理解の仕方および受け入れ方を検討したうえで、発達段階の文化的制度化について、文化人類学的な比較検証を行い、社会システムの多様性の解明を行う。これを介して、新たな発達観や人間観を提示することを目指す。 次年度の研究業績を、次の3点にまとめることができる。1)調査研究:日本国内のそれぞれの大学の状況や判断によるが、2022年にはいり海外への調査渡航が再開し、本計画班のメンバーも調査を開始した。当初予定していた音楽演奏を専門的に行う集団に加えて、エチオピアの都市部で急速に発展してきた民間のチャイルドケアに関わる団体や都市の交通サービスを提供する民間の組織なども研究対象にし、成員たちが、集団内でどのようにライフステージを経験し、そして次のライフステージへと移行していくのかを検討した。2) 学術交流:調査研究を進めていくのと並行して、計画班の研究会やセミナーにおいて、メンバーの調査報告を共有したり、ゲスト発表者を招聘して、多様な社会システムにおける文化的発達の制度化について議論を重ねた。3) 研究発信:計画班内、さらには領域内の他の班との合同研究会や、「生涯学」領域会議に本研究班のメンバーが参加発表して、広く計画班内の研究成果を発信し、学術交流を進めることに加えて、1960年代から開催されているエチオピア国際学会にて、「生涯学」のパネルを組織して、本計画班や「生涯学」という研究プロジェクトについて発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年度の研究活動を終えて、この計画班では、新たな発達観や人間観を提示するために、次の3点にそってこれまでの研究の進捗状況をまとめる。1) 生物学的な変化と社会文化的な背景との関わりを検討:次年度より本格化した調査研究によれば、音楽職能集団や競技スポーツのグループなどでは、一定の(生物学的な)年齢を超えると、生存と表現に関わるそれぞれの技法が変化して、グループの活動への参与の仕方が異なることが明らかになっている。その一方で、土器など日用品を製作するグループでは、年齢に関わらず、どの成員も亡くなるまで、グループに参与し始めた時と同じように製作作業に従事する。計画班での研究会やセミナーを介して、これらの違いが生じる(集団のメンバーがそのような参与の仕方を受け入れる)社会文化的な背景や生業活動としての特徴について、研究会やセミナーを介して議論を重ねている。今後も、この点を継続して検討していく。 2) 簡易質問票とフィールドワークとを連携させて運動・認知能力をはかるアプローチを問題提起:日本で実施されている高齢者の運動や認知能力をはかる検査では、客観的な基準をもとに、日常的な生活活動を自立して遂行できるか否か、認知機能に関わる社会活動に一人で参与できるか否かが問題になる。この計画班では、現地調査の事例をふまえて、共同で生活することや社会参加できることにも留意した簡易の質問票とフィールドワークの手法を結びつけて、アジアやアフリカの諸地域における社会文化的な文脈をふまえた生存と表現に関わるそれぞれの技法の捉え方を問題提起することに引き続き取り組む。 3) 成果発信:海外ので調査研究が再開したことにより、引き続き研究会やセミナーを重ね、多元的な生涯観を、人類学的なアプローチから問題提起できるような成果物を発信することに継続的に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
三年度は、次の3点の方法に留意して研究を推進していく。1) 調査研究:継続して海外での調査研究に取り組む。これに加えて、アジアやアフリカ諸地域以外で、従来の健康観や発達観とは異なる取り組みをしている地域を訪問し、アジアやアフリカの事例をとらえなおす。例えば、オランダでは、健康という概念を、生物としての身体の状況ではなく、本人が周囲の関係者たちと連携しながら、自らがイニシアティブをとって管理できる状態ととらえる「ポジティブヘルス」の考え方が注目されている。これらの考え方に学びながら、アジアやアフリカの諸地域における社会文化的な文脈をふまえた生存と表現に関わるそれぞれの技法の捉え方について多面的に検討していく。 2)学術交流:計画班内の学術交流の一環として、参照フィールドとして設定しているインドネシア、もしくはエチオピアで、カウンターパートと共同して小規模なワークショップを開催する。そのワークショップにて研究発表を行うと同時に、メンバーが参照フィールドを訪問し、自らの調査地域の現状を相対化できるような機会を設けることを検討している。これに加えて、2022年に試行的に企画開催したが、カウンターパートが所属する教育研究機関において、次世代を担う若手研究者や大学院生にも積極的に呼びかけてセミナーに参加してもらい、現代のアジアやアフリカにおける多元的な生涯観について、意見交換する。 3) 成果発信:これまでの研究成果をさまざまな媒体(Webサイト、動画撮影を公開など)を活用して発信する。若手研究者や院生、さらには学部生に、新たな学問分野としての「生涯学」と、その分野における人類学的なアプローチの重要性を問題提起する。
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Research Products
(16 results)