2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of cavity detection method and identification method using X-ray equipment
Project Area | Excavating earthenware: Technology development-type research for construction of 22nd century archeological study and social implementation |
Project/Area Number |
20H05810
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小畑 弘己 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80274679)
|
Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
|
Keywords | 基礎研究 / 軟X線機器 / 圧痕種実 / 圧痕昆虫 / 付着炭化物 / AI / 同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
<調査活動(基礎研究・応用研究)>:熊本大学:佐賀県嘉瀬川ダム関連縄文遺跡群(縄文後期~弥生早期)・板屋Ⅲ遺跡(縄文晩期~弥生早期)・宮崎県相原第Ⅰ(縄文早期)・宮崎県黒土遺跡(弥生早期)・長崎県弘法原遺跡(縄文早期)。佐賀県の嘉瀬川ダム関連の4遺跡および板屋Ⅲ遺跡は大陸系穀物の包埋炭化物の検出と年代測定のため実施した。炭化物抽出は終了した。黒土遺跡では,穀物の潜在圧痕を多数検出した。相原第Ⅰ遺跡ではアキノエノコログサが複数混入した土器を検出。他遺跡例も含め,縄文時代早期におけるエノコログサ属利用の可能性を調査中。北海道埋蔵文化財センター:幸連4遺跡(縄文前期末~中期)・幸連5遺跡(縄文中期~後期)・桜丘遺跡(縄文中期)。幸連5遺跡においてウニ殻入り土器を検出し,現在継続調査中である。後期土器中のヒエの潜在圧痕を確認。鹿児島県立埋蔵文化財センター:上野原遺跡(縄文晩期)・天神段遺跡(縄文晩期)・上水流遺跡(縄文晩期~弥生早期)・仁田尾遺跡(縄文晩期)。穀物資料の検出を目的とし調査中であり,天神段遺跡でイネ1点(古代?),上水流遺跡でアワ1点を検出した。 <開発研究>:公募研究(21H05355)との協業:AIによる軟X線画像同定法の開発:メンドーサ氏と開発状況の会議を2回開催し,問題点および今後の方向性について議論した。また,新たな種の種実を混入した実験試料の作成協力を行った。X線機器および調査法の開発:現有機器で撮影できない大型破片のCT撮影のため,2022年1月末に簡易型のCT装置を導入し,調査手順および撮影画像の処理・加工法について再設計を行った。 <論文・公開>:大陸系穀物の年代測定結果に関する論文2編が査読段階から印刷段階に入った。潜在圧痕のX線画像集を刊行した。土器圧痕に関する市民向けセミナーおよび若手研究者向けのセミナーを実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
基礎研究や応用研究は,大陸系穀物の伝来時期の解明という課題を解決する新たな手法である「土器包埋炭化物測定法」により,二つの遺跡での研究成果を得,公開が待たれるのみとなり,手法の開発とその高効果性を立証できた。引き続き九州地方の遺跡を中心に本手法による調査研究を推進し,これまでの仮説の検証を行っていきたい。これらの調査は悉皆的かつ高精度で行う必要があるため,時間がかかり,年代測定なども多量に生じるために,分析結果はまだ十分に得られていないが,先の二例の研究によって,本手法がもたらす効果は実証できた。これらを円滑かつ効率的に進めるため,低解像度のX線CTを使用し,欠陥(空隙)解析ソフトを併用して,効率的に穀物圧痕を特定できる体制を整えた。機器(手法)開発と調査手順に見通しが立ったことで,今後はこれらを用いた実践的な研究を推進し,研究課題に応えることが可能となった。また,土器内部に残る化石や混和材の抽出にX線機器が必須であることは,本A01班の研究のみならず,A02班・A03班の研究においても認識され,今後の土器研究において重要なアイテムであることが再認識された。この点も本研究の大きな成果といえる。それぞれの分析対象に合わせたX線機器活用の手法の開発が期待できる。 AIによる同定法の開発は,実験レベルであるが,7割以上の確率で正解答が得られた。さらに多くの現生資料のディープランニングが行われれば精度が増し,実用化へ向けて加速化できる見通しが立ち,その成果については,国際誌に投稿した。ただし,現状では,同定種が限られているので,今後は,種類を増やしてのデータ入力とシステム再構築が課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
鹿児島県立埋蔵文化財センターにおいては,2001年度にあまり検出できなかった縄文時代末~弥生時代の大陸系穀物を検出するため,分析資料を増やし,調査を実施したい。熊本大学においても菜畑遺跡をはじめとする弥生時代早期の北部九州の遺跡を分析対象とし,当該期の遺跡土壌試料を中心に花粉・プラントオパール・大型種実を総合的に分析なども加えて穀物受容期の実態を明らかにしたい。北海道においては,縄文時代中期~後期土器においては,植物圧痕資料があまり検出されなかったため,縄文時代前期~中期の円筒土器文化期の土器に分析対象をシフトし圧痕調査を実施する予定である。 また,各計画研究班と共同で,混和材としてイネ籾や植物繊維を混入した土器の分析法を確立し,繊維の種同定や混和素材の物理的特性の究明を目指したい。これは未開拓の領域であり,土器圧痕(種実・昆虫)の成因を究明する上でも欠かせない作業である。 AIによる同定法の開発は順調に推移していることから,継続的に実施していきたい。 本年度は以下のようなスケジュールで調査・組織運営を行う。 4月:北海道埋蔵文化財センター・鹿児島県埋蔵文化財センターとの調査計画立案,5月~3月:(北海道)幸連遺跡群を中心とした道南地域の縄文時代早期~後期の土器群の軟X線による悉皆調査を実施,(鹿児島県)中津野遺跡など縄文晩期~弥生前期土器群の軟X線による悉皆調査を実施予定, 応用研究として北部九州の縄文時代晩期土器の軟X線による調査を実施する。5~8月:AIのディープランニング用の実験穀物軟X線画像・3D画像の収集,9~10月:AIへのインプットおよび検証実験,10~12月:軟X線機器設置機関の選択と交渉,6~3月:国内外での研究成果発表,3月:北海道および鹿児島県の施設の軟X線機器の移設・プレハブ撤去。
|
Research Products
(23 results)