2021 Fiscal Year Annual Research Report
Morphological study of plant and animal impressions on pottery
Project Area | Excavating earthenware: Technology development-type research for construction of 22nd century archeological study and social implementation |
Project/Area Number |
20H05811
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐々木 由香 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 特任准教授 (70642057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉冨 博之 愛媛大学, ミュージアム, 准教授 (10542665)
能城 修一 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 客員教授 (30343792)
伊藤 美香 昭和女子大学, 研究支援機器センター, 助教 (70276624)
首藤 剛 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 准教授 (80333524)
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80250140)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 動植物遺体 / 土器付着炭化物 / 土器圧痕 / 縄文時代 / 利用動植物の生態・効能 / 形態学的同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
A02班の活動は大きく分けて、①現生動植物標本の収集と、②遺跡出土試料の同定である。 ①:今年度は基礎資料の蓄積のため、東北大学川渡フィールドセンター(宮城県大崎市・栗原市)や岩手県一戸町、新潟県津南町で、現生植物標本(木材やさく葉、花、果実、葉柄など)の採集を行い、製品の素材となる植物を採集した。また、所有の現生標本にはかごや縄に使用される若い(当年枝)の標本が少なかったため、当年枝を採集した。採集した木材や当年枝は組織観察用のプレパラートを作成し、構造観察を実施する予定である。キハダの果実を、宮城県仙台市で未熟な段階から定期的に採集した。岩手県一戸町御所野縄文博物館と研究連携し、土器付着の炭化種実類がどのような加工過程を経て付着したのか実験を開始した。調査と並行して、技術者と連携して、現生植物を加工して縄を定期的に製作し、加工後の外部形態をデジタルマイクロスコープとSEMで観察し、樹脂包埋切片法で組織構造を観察した。 貝類では、宮崎県宮崎市・松添貝塚と周辺地域、群馬県・居家以遺跡と長野県・湯倉洞窟遺跡周辺で現生標本を採集した。貝類の図鑑を2冊刊行した。
②:土器圧痕や土器付着動植物遺体を検討する上で、出土動植物遺体との比較が必要である。東京都杉並区向方南遺跡と調布市下布田遺跡で水成堆積物から出土した動植物遺体の同定を実施した。武蔵野台地中央部で海成の貝類や、多量の液果類などが産出するなど、土器付着炭化物の内容を考える上で、重要な試料が得られた。さらにすでに調査済みの土器圧痕レプリカの走査型電子顕微鏡撮影を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物は、希望する機関での現生標本ができなかったものの、予定を変更して現生標本の収集を行い、ニワトコとエゾニワトコを用いてシロップと酒を想定した実験を行ったり、キハダの果実加工の民俗例を岩手県で聞き取りを行って民間利用の情報を収集するなど、成分分析に向けた予備的な実験や聞き取りを先行して進めることができた。 また、土器圧痕レプリカの同定、研究補助者による走査型電子顕微鏡による撮影を進めて、約500点のレプリカについて終了し、若手育成を兼ねた研究体制が整った。 貝類は、現地調査で得られた貝類の同定・生息量等のデータをまとめつつある。また、さまざまな時代の土器圧痕で見られる貝類の同定および由来の検討を進めている。中には、貝塚を有しない遺跡から微小な食用種の圧痕が確認できた例もあり、当該遺跡で貝類が利用されていた可能性を示すと考えている。 昆虫は、現存昆虫類についての野外調査(北海道・愛媛県)および学会発表の旅費、ならびに研究推進のための基礎備品購入を行った。 このように次年度からの本格的な調査に向けての現生資料を着実に蓄積でき、また遺跡出土資料の検討も若手育成を兼ねて研究補助者を雇用して効率的に分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
植物は、コロナ禍の影響で実施できなかった東京大学秩父演習林での植物採取および採取した果実と加工した果実の液の成分分析を行う予定である。また遺跡出土植物遺体の分析を進め、土器圧痕との比較を行っていく予定である。貝類は、コロナ禍で現地調査が十分に行えなかったが、今後はより広範囲な地域において現生貝類の情報を収集し、得られた土器圧痕中の貝類の同定と、由来およびその意義を明らかにする。昆虫は、土器圧痕として残存しやすい現生標本の収集に努める。その他、2022年度は以下の4項目を重点的に研究を進める。 (1)試料収集班から提供された土器圧痕レプリカの種実・繊維・昆虫・貝類の同定と関東・東北地方を中心とした土器付着炭化物や繊維などの動植物残滓の同定を進める。 (2)関東・東北地方を中心に現生リファレンス標本および加工された動植物標本の収集と同定する。 (3)土器胎土内圧痕のX線画像の同定法の開発する。 (4)同定結果の中から検出頻度が高い動植物の現生標本の成分を分析する。
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Research Products
(32 results)