2023 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical studies on usage of pottery and the date
Project Area | Excavating earthenware: Technology development-type research for construction of 22nd century archeological study and social implementation |
Project/Area Number |
20H05813
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
國木田 大 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (00549561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 佳樹 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (70413896)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 放射性炭素年代測定法 / 脂質分析 / 炭素・窒素安定同位体分析 / 古食性復元 / 土器使用痕 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、縄文時代の栽培植物と縄文・弥生移行期における大陸系穀物の出現時期および地域的な伝播過程を復元する。「基礎試料研究」では、主に種実の潜在圧痕に含まれる炭化物を微小量炭素年代測定法によって分析し、「応用研究」では、器種・器形分類、使用痕観察、脂質分析をおこなう学際的なアプローチにより、当時の食性復元を目指す。 「基礎試料研究」では、①「弥生農耕の起源に関する研究」として、潜在圧痕に含まれる微量炭化物の分析を行った。これまでに、福岡県江辻遺跡、鹿児島県小迫遺跡において、土器に包埋された微量炭化物の年代測定に成功し、論文を国際誌などに発表した。2023年度は、島根県板屋Ⅲ遺跡、佐賀県東畑瀬遺跡等の分析に取り組み、九州・中国地方における縄文時代最末期の大陸系穀物の年代解明を進めた。この他に、北海道幸連4遺跡、宮崎県黒土遺跡、大阪府弓削ノ庄遺跡についても分析を実施した。②「東日本におけるC4植物(アワ・キビ等)、ムギ類の伝播時期」として、A02班と共同して茨城県鷹ノ巣遺跡、半分山遺跡、船窪遺跡、武田石高遺跡、武田西塙遺跡の炭化穀類の分析を実施し、関東では最も古いコムギの年代を確認した。 「応用研究」では、③「縄文時代の土器による煮炊きの復元」として、青森県三内丸山遺跡から出土した土器付着炭化物の脂質分析を実施した。その結果、縄文時代前期から中期にかけては、徐々に海棲動物の影響が大きくなることを解明した。また、縄文時代早期の千葉県飛ノ台貝塚の分析では、8.2ka寒冷化イベント前後の食性変遷を議論した。寒冷化前は海棲動物の影響が強く、寒冷化後は海棲動物から非反芻動物まで多様性のある食材選択を行っていたことが解明できた。この他に、④「弥生時代の土器による煮炊きの復元」として、奈良県唐古・鍵遺跡、清水風遺跡等の分析、⑤「様々な土器への脂質分析の活用」の課題にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「基礎試料研究」では、①「弥生農耕の起源に関する研究」において、佐賀県東畑瀬遺跡の研究成果を「第89回日本考古学協会」にて発表した。②「東日本におけるC4植物(アワ・キビ等)、ムギ類の伝播時期」として、A02班と共同して「茨城県考古学協会誌」に論文投稿を行った。この論文では、船窪遺跡出土のアワ試料で、微小量包埋炭化物の測定法を応用し、1.0mg以下の量で年代測定に成功した。 「応用研究」では、③「縄文時代の土器による煮炊きの復元」、④「弥生時代の土器による煮炊きの復元」、⑤「様々な土器への脂質分析の活用」の研究課題で、多くの学会(日本考古学協会、日本文化財科学会、日本動物考古学会、日本有機地球化学会等)や、研究集会にて成果を発表することができた。特に「第89回日本考古学協会」では、東畑瀬遺跡における土器包埋炭化物の年代、静岡県登呂遺跡や青森県三内丸山遺跡出土土器の脂質分析、遠賀川式土器の黒色化技術復元の成果等を発表した。また、B01班を中心とした「土器残存脂質分析による学際的アプローチ(3)」のセッションを行い、研究手法の共有化を図るとともに、課題や結果に関する問題点を議論することができた。日本文化財科学会第40回記念大会では、「第7回土器科学分析ワーキンググループ」を開催した。 若手育成事業として、「第1・2回製塩土器科学分析若手講習会」、「第3~5回考古学のための脂質分析、同位体分析若手講習会」、「第1~5回博物館資料における3D化に関する若手講習会」等を実施した。その他に、研究手法や公表したデータ等を、一般概説書で紹介している。研究成果は順調にあげられているが、国際論文への投稿は予定通りに進んでおらず、この状況を考慮して、進捗状況の区分は(1)ではなく、(2)の「おおむね順調に進展している」に区分した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、四つの方策に重点を置き進める予定である。①「研究実施の環境整備」、②「プロジェクトの情報発信」、③「若手育成」、④国際共同研究である。 ①「研究実施の環境整備」では、「応用研究」の古食性研究を進めるにあたり、2021年3月に、東京大学総合研究博物館に元素分析計付安定同位体質量分析装置を導入した。2022・2023年度は、計画通り順調に分析を継続している。 ②「プロジェクトの情報発信」では、2023年度5月に日本考古学協会で「土器の機能や用途を考える-土器残存脂質分析による学際的アプローチ(3)」を開催した。また定期的にオープンセミナーも開催し、プロジェクトの情報発信に努めている。今後も、学会活動を通じた広報活動や、オープンセミナーを継続して実施し、研究活動を充実させる予定である。この他に、展示などの形で一般に研究成果を公開することも進めている。 ③「若手育成」では、次世代の若手を育成する試みとして、「第1・2回製塩土器科学分析若手講習会」、「第3~5回考古学のための脂質分析、同位体分析若手講習会」、「第1~5回博物館資料における3D化に関する若手講習会」等の様々な講習会を実施した。 ④「国際共同研究」では、ウズベキスタン、中国と共同研究を実施している。浙江省文物考古研究所との共同研究では田螺山遺跡などの分析を進めている。また、ウズベキスタン共和国科学アカデミー考古学調査研究所とは、ダルヴェルジン遺跡の分析を継続して進めている。四つの推進方策を遂行することにより、研究を進展させ、学会発表や論文投稿につなげていく。また、プロジェクトの情報発信や、若手育成を進めることにより、将来的な研究の深化にも貢献していく。
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