2021 Fiscal Year Annual Research Report
Production and Distribution of Prestige Goods
Project Area | A New Archaeology Initiative to Elucidate the Formation Process of Chinese Civilization |
Project/Area Number |
20H05816
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 慎一 金沢大学, その他部局等, その他 (80237403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 由美子 京都大学, 総合博物館, 准教授 (50572749)
久米 正吾 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 特任助教 (30550777)
久保田 慎二 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部附属国際人文社会科学研究センター, 准教授 (00609901)
角道 亮介 駒澤大学, 文学部, 准教授 (00735227)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 中国文明起源 / 考古学 / 威信材 / プロト・シルクロード |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19の流行により、2021年度中は訪中できなかったが、本研究に関わる資料(試料)の分析を進め、再繰越した2023年度に『中国文明起源の考古学』、『東アジア考古科学の新展開』(雄山閣)として論文集を編集・刊行した。 代表の中村は、中国文明形成のプライム・ムーバーと言える良渚文化について、資源管理(『考古学研究』論文)、インフラ整備(『狭山池図録』)、ヒトとモノの移動(『中国江南の考古学』論文)をテーマに研究を進め、論文化した。また、中国新石器時代晩期における地方文明間の威信財交換の実態とその歴史的意義について考察し、日本考古学協会大会において講演を行った(『北陸と世界の考古学』論文)。村上は、これまで進めてきた浙江省内の新石器時代木製品調査の成果を5本の報告書(いずれも『中国江南の考古学』所収)にまとめる作業を行うとともに、木製品の歴史的位置づけを行うために地域や時代を広げて比較対象の集成を進めた。久保田は、自らが構築してきた華北太行山脈地区の土器編年の見直しを行った。また、A01に紐づけされた公募研究採択者の齊藤希氏とともに、同氏が構築した北方地区および新石器時代以降における土器編年との年代観や併行関係について検討を進めた。久米は、中央アジアを対象として(1)山岳地形での集落立地予測手法の開発と交流ルート推定、(2)希少原材を用いた威信材利用の分布研究、(3)青銅製品の分布研究と産地分析の高精度化、の3つの研究項目を設定・実施した。また、ウズベキスタンにおいて出土資料調査を行った。角道は、中国における青銅器の出現について、その独自起源説を視野に入れつつも、西方からの伝来の可能性を重視し、初期青銅器の分布状況を収集・整理した。 なお、二里頭遺跡出土のタカラガイと水銀朱に関する共同研究実施について中国社会科学院考古研究所と基本的合意に達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の流行により、2021年度は中国への渡航がかなわなかったが、国内で対応可能な検討や分析を精力的に進めた。中村は、トルコ石、タカラガイ、象牙等の威信財遺物の集成的研究を継続的に実施するとともに、文明形成に関わる理論的考察を深めた。村上は、既報木製品のなかで威信財に該当する可能性のある鉞柄について装着方法の検討を行い、それの部品となる玉製品をも併せ復元研究を進めた。久保田は、詳細な土器編年図を作成し、それを領域メンバーに提供することで、時間軸の共有に大きく貢献した。久米は、(1)山岳地形での集落立予測手法の開発と交流ルート推定に関しては、追加地形データ・衛星画像の整備を進め、分析手法開発に向けた基盤を整えた。(2)希少原材を用いた威信材利用の分布研究では、フェルガナ盆地域のロシア語関連報告書の収集に着手した。(3)青銅製品の分布研究と産地分析の高精度化については、中国領を含め広域に拡散するアンドロノヴォ青銅器の関連文献、銅原産地関連データの収集に着手した。角道は、中国初期青銅器の集成的研究、青銅器鉛同位体比データの収集などを行った。全体的に、日本国内で実施可能な研究を積極的に推し進めたことで、研究をほぼ順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者・分担者の役割分担は以下の通りである。即ち、中村は計画研究全体を統括するとともに、研究計画A03の渡部と共同で遺跡・遺構・ 遺物の全体的なデジタルドキュメンテーションを推進し、領域全体に研究の基礎的データを提供する。出土遺物の研究は、新石器時代については久保田と秦嶺(研究協力者)が、青銅器時代については角道と秦小麗(研究協力者)が主導する。木器は時代を問わず村上が担当し、出土木製品・民族事例の双方の蓄積が進んだ器物については、研究成果報告での考察や学会発表、論文化に向けてデータを整理する。久米は、集落立地予測手法の開発と中国-中央アジア間交流ルートの推定、トルコ石、タカラガイ等の希少原材を用いた威信材利用の分布研究、アンドロノヴォ文化系青銅器の産地分析を進める。 COVID-19の流行が沈静化し、年度内の訪中が可能になった場合には、中国各地の遺跡や関連研究機関を訪問し、中国側調査の進展状況の確認を行い、共同調査の具体的な段取りを決定していく。その上で、これまでに共同研究が一定程度進行している浙江省の良渚遺跡群、陝西省の石ボウ遺跡、河南省の二里頭遺跡などを皮切りに順次研究に着手する。 COVID-19の流行により年度内の訪中調査が不可能となった場合には、本領域の中国側連携機関として協力が確約されている北京大学考古文博学院、復旦大学科技考古研究院、中国社会科学院考古研究所、陝西省考古研究院、浙江省文物考古研究所などから研究対象遺跡ならびに関連遺跡につき最新情報の提供を受けるとともに、Covid-19感染確認のための長期待機にも対応可能な留学生やポスドク研究員などを介して分析試料の受け渡しを行い、日本国内において分析を進める。また、これまで蓄積してきた威信財遺物や囲壁・環濠集落の分布に関する情報に基づき、計画研究A02と連携してデータベース化を進める。
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Research Products
(35 results)