2020 Fiscal Year Annual Research Report
動的エキシトン制御を志向した有機ドナー・アクセプター材料創成
Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
20H05833
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 容子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20372724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 恭平 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (00778904)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 動的エキシトン / ドナー・アクセプター / 前駆体法 / 薄膜構造制御 / 有機薄膜太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、動的エキシトン制御を志向した有機ドナー・アクセプター(D・A)材料の創成と精密な薄膜構造制御により、本領域に貢献することを目的としている。我々が開発してきた前駆体法を用いることで、置換基の役割を分子の電子構造制御と薄膜中の分子配向や結晶性の制御、構造体への熱的ゆらぎの導入に集中することが可能である。 初年度である2020年度は、ベンゾポルフィリンとフタロシアニンの中間的な性質を示す、5,15-ジアザベンゾポルフィリンの熱前駆体の合成に成功した。5,15-ジアザベンゾポルフィリンの合成はこれまでにも報告例があるが、いずれも溶解度が低く溶液プロセスには不向きである。溶液プロセス可能な前駆体の合成は1例報告されているが、その収率は1%程度と極めて低い。今回我々は、前駆体の合成収率を大幅に向上することに成功し、J.Porphyrin Phthalocyanine.2021, 25, 1186-1192に報告した。さらにこれらジアザポルフィリンの10,20位に置換基を導入することにも成功した。今後、置換基の種類を増やし、溶液プロセスによる薄膜構造制御と有機薄膜トランジスタ特性の評価を展開する。 また、2017年に報告したBHJ型有機薄膜太陽電池(J. Mater. Chem. A 2017, 5, 14003)の、電荷分離・電荷再結合メカニズムを明らかにするために、領域内共同研究を開始した(Chem. Lett. 2021, 50, 1859-1862)。p型材料としてジケトピロロピロールーベンゾポルフィリン(DPP-BP)、n型材料としてPC61BMを用いたBHJ型太陽電池において、素過程へのアルキル置換基の長さとポルフィリン中心金属の効果に着目して研究を行った。平行して新しいD-A-D型p型材料の合成にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジアザベンゾポルフィリンはベンゾポルフィリンとフタロシアニンの中間的な性質を示す。すなわち、5,15位に二つの窒素原子を含む一方、10,20位のメチン炭素には置換基を導入でき、電子構造や薄膜構造の制御が可能である。しかし、溶液プロセスでの成膜には溶媒に可溶な前駆体が必要とされるにもかかわらず、その合成法は確立していなかった。今回我々はまず、10,20位に置換基を持たないジアザベンゾポルフィリンの熱前駆体の合成法の確立に成功した。さらに、これらを溶液プロセスで成膜し、加熱によりジアザベンゾポルフィリン薄膜へと変換、その薄膜の物性を、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、X線回折、光電子分光法などにより評価した。これらの結果は今後、新しい塗布型有機半導体の開発に大きく貢献するものである。 さらに、領域内での共同研究として、低分子BHJ太陽電池の電荷キャリアダイナミクス(Chem. Lett. 2021, 50, 1859-1862)、C60-Xanthene化合物の分子内電荷分離メカニズム(Eur. J. Org. Chem. 2021, 3377 - 3381)に関する共同研究、領域間で新規n型材料の開発とFET特性(Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 14060 - 14067)に関する共同研究成果も得られ、順調な滑り出しと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
低分子材料の利点を活かし、低分子有機薄膜太陽電池の薄膜の結晶構造と太陽電池性能の相関に関する研究を進める。前駆体法を用いると、有機半導体材料の溶解度を上げるために多くの置換基を導入する必要がなく、置換基の薄膜構造制御への効果を抽出して議論することが可能である。そこで置換基による分子間相互作用の制御を目論み、置換基構造と分子間のπーπ相互作用、電荷移動度の相関に関する研究に注力する。これまでテトラベンゾポルフィリンをDPPで挟むA-D-A型のp型材料に関して研究を行ってきたが、DPP部分により電子求引性の高い置換基を導入することで、p型材料の改良を図る。2021年度は、2020年度に開始した合成を継続し、有機半導体としての電荷移動度、太陽電池特製の評価まで実施する。一方、薄膜構造と励起子ダイナミクスの相関に関する領域内共同研究を継続して行う。 新しい有機半導体材料としてのジアザベンゾポルフィリン類の開発に関しては、10,20位の置換基を検討し、薄膜構造を制御する。2020年度に合成法はほぼ確立したので、大量合成と溶液プロセス法の改良、薄膜構造制御と電荷移動度の評価を実施する。電荷移動度に関しては、薄膜の電界効果トランジスタや単結晶トランジスタの評価を実施する。
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Research Products
(13 results)