2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular-scale elucidation of the reaction elementary processes on the model dust surfaces by single-molecule surface spectroscopy
Project Area | Next Generation Astrochemistry: Reconstruction of the Science Based on Fundamental Molecular Processes |
Project/Area Number |
20H05849
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今田 裕 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 上級研究員 (80586917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 宜昭 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00432518)
清水 智子 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00462672)
金 有洙 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (50373296)
数間 恵弥子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50633864)
香内 晃 北海道大学, 低温科学研究所, 名誉教授 (60161866)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 塵モデル表面 / 走査プローブ顕微鏡 / 反応素過程 / 単分子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
パルスレーザー堆積(PLD)を用いて、ルテニウム酸ストロンチウム薄膜の上に塵モデル表面を作製し、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)により表面観察を行った結果、原子レベルに平滑な表面を得るために最適化が必要であることが分かった。 星間分子雲に存在する氷表面を原子レベルで分析するためのモデル系の探索を行った。様々な金属単結晶に加えて、氷とは異なる対称性を持つイオン結晶の上に氷を成長させて表面の構造を超高真空AFMで解析した。イオン結晶においては、界面の静電ポテンシャルが氷の成長様式に影響を与える可能性があったが、十分に厚い氷の表面を分析すると金属基板と同様の表面構造を有していることがわかった。 疑似星間塵表面として、非晶質炭素基板、非晶質Mg2SiO3.3基板および複数分子種の混合氷(H2O,CH3OH,NH3)への紫外線照射により生成した複雑有機分子薄膜基板を用いて、その基板上におけるH2O, CO2, CO分子の結晶化実験を超高真空透過型電子顕微鏡を用いて行い、結晶化物の形状特性は分子の種類により異なることを明らかにした。また、その形状は基板の種類にも強く依存することも明らかにした。さらに、氷IhおよびIcへの紫外線照射過程の観察研究も行い、72K以上の温度領域における氷Iへの紫外線照射が強誘電性を持つ氷XIの生成に寄与することを明らかにした。 鉱物に対するガス吸着の挙動を、酸化鉄を例に、STMで観察した。四酸化三鉄で最も熱力学的に安定な(111)面に対し、一酸化炭素分子の吸着は室温では起こらないこと、水分子は解離吸着と分子吸着が共存することを確認した。また水と一酸化炭素を共吸着させると反応が進行することを示唆するデータを得た。酸化鉄ナノ粒子のSTM観察からは(111)面が多く露出していると考えられる多面体構造を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パルスレーザー堆積(PLD)を用いて、ルテニウム酸ストロンチウム薄膜の上に塵モデル表面を作製し、原子間力顕微鏡(AFM) および走査型トンネル顕微鏡(STM)により表面観察を行った。ステップ-テラス構造は見えたものの、原子レベルに平滑な表面と得るにはさらなる最適化が必要である。 金属単結晶に加えて、イオン結晶の上に氷を超高真空中で成長させて、それらの表面の構造を超高真空AFMによって分析した。イオン結晶は4回対称性を持つので、氷とは対称性が異なる。それを反映して、氷薄膜においてはその対称性を反映した超構造が観察されたが、140 Kで加熱しながら厚い氷を成長させると金属基板と同様の氷表面が観察された。氷表面の構造が基板の対称性に依らないという知見は、星間分子雲の氷を理解する上で重要である。 非晶質炭素基板、非晶質Mg2SiO3.3基板および複雑有機分子薄膜基板の生成と、それを用いた複数分子種の結晶化実験のすべてを行い、その成果を国際学術誌に発表した。また、72K以上の温度領域における氷Iへの紫外線照射実験も行い、氷XIへの氷構造の変化を検出した。この結果から、太陽系における木星・土星域の氷微粒子や氷衛星表面で氷XIが生成されることが示唆され、この結果についても国際学術誌に発表した。 四酸化三鉄表面への水、一酸化炭素、さらに共吸着系のSTM像のデータを一通り揃えることができた。また酸化鉄ナノ粒子という工業利用されているものを宇宙塵モデルに使用できるかの検証も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
パルスレーザー堆積(PLD)を用いて、最適化を続けているルテニウム酸ストロンチウム薄膜の上に塵モデル表面を作製し構造解析を行う。作製した薄膜試料表面を原子間力顕微鏡および走査型トンネル顕微鏡(STM)により原子レベルで平坦な表面が実現されているか評価する。 超高真空中で作成した結晶氷に紫外光を照射して、表面で起こる変化を超高真空低温原子間力顕微鏡によって調べる。表面融解が起こる場合、個々の水分子の移動の様子を高空間分解で観察する。そして、結晶内部で起こりうる誘電分極の変化について、静電気力の計測を通して、ナノスケールの分解能で定量的に調べる。また、25K程度に冷却したSi(111)7x7基板上に水分子線を蒸着し作成したアモルファス氷を昇温することで生じる表面形状の変化を原子間力顕微鏡により測定する。さらに、基板に印加するBias電圧を変化させて表面形状測定を行い、その形状像変化からアモルファス氷の表面電位分布を調べる。 STMによる実空間観測および単分子分光を駆使して、PLD装置で作製した塵モデル表面での星間分子の単分子反応の研究を展開していく。引き続き、厳密に規定された金属表面および不活性な酸化物表面上における分子の解離反応の素過程を、STMを用いた実験により解明する。吸着種の分光学的同定、吸着構造解析、反応エネルギー障壁などの熱力学パラメータの計測、光や電子による反応素過程の単分子計測に基づき、表面反応素過程を解明する。 四酸化三鉄(111)面で反応が進行することが示唆されるデータが得られたものの、単に時間経過により吸着物が消え脱離したように見えただけであるから、再現性を確かめる実験を進め、また表面上に他の変化がないか、詳しい解析を実施する。
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Research Products
(11 results)