2022 Fiscal Year Annual Research Report
Dark Matter in Quantum Gravity
Project Area | What is dark matter? - Comprehensive study of the huge discovery space in dark matter |
Project/Area Number |
20H05860
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 雅人 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (00726599)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 智 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (10784499)
野村 泰紀 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員上級科学研究員 (40647616)
齊藤 遼 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (70781392)
|
Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
|
Keywords | ダークマター / 超弦理論 / 量子重力 / 沼地予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はもともと2022年度に予定していたものであるが、博士研究員の雇用が2022年度中に不可能であることが判明したという都合もあり2022年度の研究資金を繰り越して2023年度に使用することとした。繰越資金の大部分を用いて2023年度から半年間、東大Kavli IPMUにてMeer Ashwinkumar氏を博士研究員として雇用し、量子重力やホログラフィーにおける大域対称性についての系統的な研究を行なった。より具体的には、一般的な偶格子から定まる「一般化されたナライン理論」を定義し、その性質を調べたほか、理論のトーラス分配関数を理論のモジュライ空間の上でアンサンブル平均するという操作を,数学において知られていたジーゲル・ヴェイユ公式を用いて厳密に実行した。また、このアンサンブル平均の結果得られた理論の重力双対がチャーン・サイモンズ型の位相的場の理論であることを示した。近年、ブラックホールの情報喪失問題の解決と関連した「ホログラフィーにおいてアンサンブル平均を考える」という思想が大きく注目を集めているが、本研究はその操作を最も精密に実行してみせた例の一つになっている。さらにこの例において、アンサンブル平均の結果、大域対称性が現れることを示した。一般に量子重力理論においては大域対称性が破れることが沼地予想の一つとして期待されており、ダークマターやニュートリノを代表する様々な現象論的模型においてその帰結を議論することは興味深い問題である。今回の研究では、この沼地予想の一つの抜け穴としてアンサンブル平均が存在するということを示しており、今後ダークマターの観測的探索において重要な役割を果たす可能性もある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で想定していなかった優秀な博士研究員の雇用に成功したことで、共同研究を進めることができた。研究員雇用の都合上予算を一部繰り越したが、結果的には量子重力・ホログラフィーにおける大域対称性の破れやアンサンブル平均のものでの創発といった現象を議論することが可能になった。これは当初の想定を超えた進展であると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回博士研究員として雇用したMeer Ashwinkuamr氏は2023年度秋をもってスイスBern大学の博士研究員として栄転されたが、現在も本研究の研究代表者と共同研究を活発に行なっており、さらなる研究の進展が期待できる。同時に、今後の研究では大域対称性の破れという沼地予想の現象論的帰結についてより系統的に調べていきたいと考えている。
|