2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of origin of weak interactions of synthetic polymers with its specific proteins
Project Area | Biophysical Chemistry for Material Symbiosis |
Project/Area Number |
20H05875
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
白石 貢一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (40426284)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | ポリエチレングリコール / 抗PEG抗体 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成高分子ポリエチレングリコール(PEG)誘導体により産生されるPEG特異的抗体がある。PEGが高分子であるにも関わらず、このPEGと抗PEG抗体(IgM、IgG)との関係は非常に弱い特異的相互作用が存在し、ハプテン様の挙動を示す。PEGのハプテン様性質は、1.PEGの分子量に依存し、2.PEGが結合された分子の性質によって、変化する。各分子量のPEG(2k~1,000k)を用いて、PEG特異的IgM抗体、およびIgG抗体との相互作用を評価したところ、PEG分子量に伴う親水的性質の減少が、抗PEG抗体への結合親和性を向上させることが明らかとしていたが、親水的なPEG鎖の存在(PEG濃度、PEG分子量)は特異的な相互作用が起こりにくいことを示している。これに加えて、PEGの示す抗PEG抗体への特異的な弱い相互作用が2段階の作用を経ている可能性が得られた。1つにはPEG濃度が高くなることで、PEGの排除体積効果による抗PEG抗体の固定化PEGへの結合性を向上し、さらにPEG濃度が高くなるとPEG鎖自身が抗PEG抗体へ作用できるようになる2つの段階があることが示唆された。非常に興味深いことに、PEGと抗PEG抗体との特異的作用に競合する可能性のある分子を見出し、このプローブ分子としての分子との新たなPEG-conjugateを作製したところ、分子プローブがPEG鎖に近いときにPEGと抗PEG抗体との結合親和性が向上し、分子プローブがPEG鎖から離れるとPEG鎖と抗PEG抗体との結合親和性が元に戻ることが分かった。また、PEGと抗PEG抗体との相互作用が起こりにくい分子の設計を行い、新たなPEG分子群を作製し、抗PEG抗体との結合解析を行ったところ、予想通り相互作用を低減させることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PEGと抗PEG抗体との特異的な弱い相互作用の解明と、それを起点として起こる分子の応答を明らかにするために、PEGと抗PEG抗体との間に起こる現象に特化した検討を行い、領域内での新たな視点の導入により興味深い現象を見出している。一方、PEGと抗PEG抗体との特異的な弱い相互作用がより強い相互作用へと移り変わるにはPEG分子、および抗PEG抗体分子のもつ場の影響が重要であることを見出し、それを回避する分子の作製を行い、予想通りの結果が得られている。結合解析装置の納入により、各分子における相互作用の変化を追跡することが可能になり、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は興味深い現象を見出した。実績の概要に示したが、PEGと抗PEG抗体との相互作用を競合する可能性のある分子を見出した。その他の分子プローブ群の検討、およびその分子プローブと抗PEG抗体との相互作用を評価することによって、PEGと抗PEG抗体との相互作用のメカニズム解析を含めて検討する予定である。また、抗PEG抗体との相互作用を抑制するための新たな作製したPEG分子群は、抗PEG抗体との相互作用を、特に抗PEG IgG抗体において低減することが認められたが、これは分子鎖長に依存して起きていると考えられる。抗PEG IgM抗体においては、設計は同じであるが、その影響を増強する分子の作製が必要であると考えられる。
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