2020 Fiscal Year Annual Research Report
複合的な不均一環境における根粒共生を介した窒素栄養獲得の統御機構
Project Area | Multi-layered regulatory system of plant resilience under fluctuating environment |
Project/Area Number |
20H05908
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
壽崎 拓哉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40575825)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 根粒形成 / 窒素応答 / 転写因子 / ミヤコグサ / 植物微生物共生 / 長距離シグナリング / 器官間コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究により、ミヤコグサにおける器官間コミュニケーションを介した根粒形成の制御に関わるペプチドを同定している。今年度はそのペプチドとそのホモログの機能解析を行った。まず、一重変異体と二重変異体を用いて、根粒菌感染や硝酸に応答したトランスクリプトーム解析を行い、これらのペプチドの下流で発現変動する遺伝子を網羅的に同定した。また、地上部と地下部のそれぞれにおいて、根粒菌感染や外的・内的な窒素栄養量の変化に応じたこれらペプチド遺伝子の発現パターンを調べた。さらに、植物種で共通したこのペプチドファミリーの機能を明らかにするために、シロイヌナズナのホモログに関する種々の解析を行った。 ミヤコグサでは2つのNIN-LIKE PROTEIN (NLP) 転写因子(LjNLP4、LjNLP1)が硝酸に応答した遺伝子発現制御のマスターレギュレーターとして機能する。今年度は硝酸トランスポーターの1つであるLjNRT2.1が、硝酸の量に応じた根粒共生の抑制制御を仲介する機能をもつことを明らかにした。高濃度の硝酸存在下では、LjNLP1によってLjNRT2.1の発現が直接誘導されることがわかった。また、LjNRT2.1を介した細胞内への硝酸の流入によりLjNLP4が核へ移動し、根粒形成の正負の制御に関わる遺伝子の発現制御が起こる可能性が示唆された。さらに、根粒形成時に特異的にはたらくLjNINによってLjNRT2.1の発現抑制を介して外部硝酸の取り込み量が調節される可能性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析対象のペプチド因子、転写因子、硝酸トランスポーターの研究が進み、転写因子と硝酸トランスポーターについては研究成果を論文発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ペプチド因子による器官間コミュニケーションを介した植物の不均一環境に対する適応機構を明らかにするための種々の解析を推進する。
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