2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanisms of multiple localization and its regulation of cellular proteins
Project Area | Multifaceted Proteins: Expanding and Transformative Protein World |
Project/Area Number |
20H05929
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
遠藤 斗志也 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (70152014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 俊介 九州大学, 農学研究院, 助教 (70704295)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | Msp1 / Spf1 / ミトコンドリア / ER / TAタンパク質 / GETシステム / タンパク質配送の校正 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは,タンパク質の配送にはやり直し(校正)機構が存在すること,すなわちミトコンドリア外膜のAAA-ATPアーゼのMsp1がミトコンドリア外膜に誤配送された膜タンパク質を検出して引き抜き,ER膜に送り,ERで分解するか配送をやり直すかが決まることを見出した。本研究では,Msp1による「誤配送の校正」の分子機構の詳細を解明するとともに,ERやペルオキシソームのような他のオルガネラでも同様の校正が起こるのかどうか,校正に関与する因子,機構はどのようなものかを明らかにする。そして細胞内のタンパク質局在化における「局在化の校正」機構の意義とインパクトを明らかにすることを目指している。 これまでに,Msp1によってミトコンドリア外膜から引き抜かれた誤配送テイルアンカー(TA)タンパク質がERに移動すること,この移動にはサイトゾルのシャペロンGet3とそのER上の受容体Get1/2(合わせてGETシステムと呼ぶ)が関わることを明らかにした。さらに人為的にミトコンドリアに誤配送させたモデル基質だけでなく,オーセンティックなERタンパク質もGETシステムを一過的に除去してミトコンドリアに誤配送させると,やはりMsp1によってERに戻されることがわかった。これらの解析結果を,論文発表した(J. Cell Biol. 2022)。 同様の校正がERで起こる可能性について注目されるのが,ERのATPアーゼのSpf1である。Spf1が欠損するとミトコンドリア外膜のタンパク質(TAタンパク質と一部のNアンカータンパク質)がERに誤局在し,Spf1を発現するとミトコンドリアへの正常な局在が回復することをケイ光顕微鏡のタイムラプス観察により見出した。これらの結果はSpf1がミトコンドリアとER間での膜タンパク質の正しい局在化を調節していることを示唆するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,Msp1欠損時にペルオキシソームからミトコンドリアに誤配送されるモデル基質Pex15Δ30が,Msp1の発現を回復させることによってミトコンドリア外膜から引き抜かれてERに移動すること,この移動にはGETシステムが関わることを明らかにした。さらにMsp1欠損時にGet3の一過的除去によってミトコンドリアに誤配送させたオーセンティックなERタンパク質Frt1も,Msp1の発現を回復させることによってERに戻されることがわかった。 次にERのATPアーゼであるSpf1が欠損するとミトコンドリア外膜のTAタンパク質や一部のNアンカータンパク質がERに誤局在し,Spf1を発現するとミトコンドリアへの正常な局在が回復することを見出した。ERに移動するNアンカータンパク質はミトコンドリア上でオリゴマーを作りにくい場合に限られることから,いったんミトコンドリアに局在したタンパク質がある確率でERに移動しうる可能性が示唆される。これらの結果はSpf1がミトコンドリアとER間での膜タンパク質の正しい局在化を調節していることを示唆するものと考えられ,これまでのタンパク質の細胞内交通の概念を大きく書き換える可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリア外膜に誤配送されたタンパク質は,外膜のATPアーゼのMsp1が配送やり直しを促すが,ペルオキシソームタンパク質をミトコンドリアに誤配送させる実験系がこれまでは限定的であった。そこでオーキシン誘導型分解法によりPex19を急速分解できる系を利用して,あらたにペルオキシソーム膜タンパク質をミトコンドリアに誤配送させ,誤配送ペルオキシソーム膜タンパク質のMsp1に依存した配送のやり直しを蛍光顕微顕微鏡タイムラプス観察により検証する。Msp1のN端膜貫通(TM)配列を,ミトコンドリア,ER, ペルオキシソームのNアンカー型膜タンパク質のTM配列に置き換えたタンパク質を作製する。野生型Msp1はミトコンドリアだけでなく,ペルオキソームに一部局在するので,ミトコンドリアのみ,ペルオキシソームのみに存在するMsp1を作製し,各オルガネラの膜タンパク質の局在にどのような変化が起こるかを調べる。次に,最近松本らがクライオEM構造決定に成功した耐熱性酵母由来Msp1について,得られた構造を基に変異体の機能解析を行う。また,酵母発現系より膜貫通配列を含む全長Msp1とモデル基質(Pex15Δ30)複合体を調製し,クライオEMによる構造解析を進める。 昨年度に引き続き,spf1Δ株におけるミトコンドリア外膜タンパク質の局在の撹乱が,発現を回復したSpf1だけでなく,ERに人為的に局在化させたMsp1によっても回復できるかどうかを調べる。Spf1の役割については,いったんミトコンドリアに移行したタンパク質が何らかの機構でERに誤配送された段階でその局在を校正するだけでなく,新規ミトコンドリア外膜タンパク質の正しい局在化にも関わる可能性を見出した。Spf1による誤配送タンパク質および新規合成タンパク質のミトコンドリアへの(再)配送の分子機構の解明に向けて実験を進める。
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Research Products
(14 results)