2022 Fiscal Year Annual Research Report
針状ケイ酸体を細胞が産生、運搬、繋げるカイメン骨片骨格形成機構
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
20H05942
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船山 典子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30276175)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 形態形成 / 骨格 / 骨片 / 建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、当初の計画の様に研究が進んだプロジェクトがあり、挑戦的な研究には苦労し試行錯誤を繰り返しているが、研究全体としておおよそ順調に進捗している。特に、計画班員、公募班員との議論や助言、共同研究により、自分達だけでは出来なかった解析が可能になり、研究推進を加速させている点で、領域研究であることの大きな効果を実感している。
カイメンの多様な形を生み出す骨片骨格形成過程の違いの解析には、i)幼若個体の骨片の繋がり方の詳細を3次元で捉え解析すること、ii)成体カイメンの骨片骨格の繋がり方を3次元で捉え解析することが必要である。正立光シート型顕微鏡の稼働にようやく成功、3次元再構築像からの骨片の位置座標の抽出など、これまで出来なかった3次元での骨片の繋がり方の解析が可能になったこと、microCTscanでの骨片骨格の撮影を共同研究で試み、粗な骨格の抽出が可能となるなど、大きな進捗があった。
一方、この計画研究以前から継続して1歩ずつ地道にすすめてきたRNAseqと解析から得た候補遺伝子群についても、cDNAクローニング、mRNA発現解析が進み、これまで遺伝子発現で捉えられなかった細胞種を捉え、細胞機能の解析が進むなど、分子・細胞機構についての解析も進んでいる。計画研究で雇用している教務補佐員のバイオインフォマティクスのスキルを生かし、候補遺伝子群の精査や絞り込み、新たな検索なども行えていること、2022年度は、抗体作成を試み、western blotting, 免役組織化学的解析など、たんぱく質レベルでの解析法が研究室として再稼働したなど、今後の研究展開に繋がる、解析手法の幅を広げられたことは今後の展開の基礎がためと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題 I :国内外で未成功の、カイメン動物のゲノムへの遺伝子挿入実験法の確立に引き続き挑戦したが、成功には至らなかった。しかし、骨片を繋げる細胞・分子機構に関し、生きたカワカイメン幼若個体におけるコラーゲンマトリクスの蛍光可視化に成功、ようやく稼働出来たLuxendo社ライトシート型顕微鏡QuViSPIMを用い、骨片片及び骨格を繋ぐコラーゲンマトリクスの3次元再構築像の取得に成功、新たな知見を得た。また、固定した幼若個体個体においてmRNA発現で捉えた骨片を繋げる細胞の詳細な解析を加え、成果は投稿論文作成中である。
研究課題 II: RNAseqにより得た、芽球骨片運搬及び配置の時期に発現が上がる遺伝子群のうち15程の遺伝子に関し、RT-PCRによる遺伝子クローニング、WISHによる発現細胞の解析を進めた。芽球骨片運搬に関与する細胞種で特異的に発現する遺伝子を国内外で初めて同定した。Novelな遺伝子で、遺伝子の機能をアミノ酸配列から仮定することは出来ないが、芽球骨片のタイムラプス撮影による解析とmRNA発現解析の組合せ解析により、この細胞種の働きを明らかに出来たことは、芽球骨片運搬の細胞・分子機構解明の第1歩となる成果である。
研究課題 III: 成体カイメンの詳細な骨格解析が必要と考え、共同研究でmicroCTscanを用いた撮影と解析に取り組んだ。i)コラーゲンマトリクスと骨片の輝度が重なり分離が困難である、ii)骨格以外の組織がほぼ無い試料を調整する必要がある等の問題に、約100ギガの大容量撮影画像データを扱い週のオーダーで行う解析の試行錯誤を繰り返し行い取り組んだ。サンプル調整の過程で骨格の一部が崩れ、輝度調節で一部の骨片の情報を抽出出来ないが、骨片の3次元再構築像の取得、とその解析の手法が見えてきたことは大きな前進である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題 I:骨片骨格形成の主な担い手細胞であるTransport cellsの細胞挙動骨片の認識、骨片への接着、細胞集団での移動などの細胞・分子機構解明に向けて、倒立顕微鏡下の操作によりTransport cells richサンプルを調整するという高い技術と集中力を要する実験に挑戦する。サンプルが得られればRNA抽出、RNAseqを行い、バイオインフォマティクスを用いTransport cellsで発現する候補遺伝子群を得る。cDNAクローニングとWISHによりTransport cellsでの発現を解析、鍵となる分子機構の解明を目指す。骨片を繋ぐ細胞とコラーゲンマトリクスの研究については、論文を投稿、論文発表を目指す。
研究課題II:引き続き芽球骨片運搬と芽球コート形成に関与する可能性のある遺伝子群の解析を行う。今年度は芽球コート形成を行う芽球上皮細胞に特に着目しWhole mount in situ hybridizationによる解析を行う。詳細な解析には、連続切片による解析が必須となるため、WISH後のサンプルのパラフィン切片作成法も確立し、解析を行う。
課題III:カワカイメンの成体撮影像からのの骨片骨格抽出と解析、幼若個体骨格の骨片骨格の骨片の両端の座標取得を行い、両者で共通する特徴、成体骨格でより顕著になる特徴を抽出、その特徴が生み出される仕組みの理解に向け、ウェットの実験及び数理モデル構築の試みを行う。また外部形態の違いを生み出す骨格形成機構の理解へと繋げる為、カワカイメンとは異なる外部形態を持つカイメンの骨片骨格試料作成も試みる。
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