2021 Fiscal Year Annual Research Report
Formation of fish fins by assembly of collagen needle-like crystals
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
20H05943
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 滋 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (10252503)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | アクチノトリキア / ヒレ / 間葉系細胞 / アクチノジン / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
(繰り越しの原因となっていた課題。)繰り越しの原因になっていたアクチノトリキア配列の数理モデル化に関しては、現在、3Dでのやや縮約したモデルでのシミュレーションが成功している。インビトロでの、アクチノトリキア2本と間葉系細胞の相互作用を再現したもので、角度をつけて配置したアクチノトリキアを、間葉系細胞がホールドし、膜の力学特性により平行に並べるさまが再現されている。今後は、このモデルにさらに基底上皮膜を加え、より、現実に近いシミュレーションを目指す。 今年度は、意図していなかったが、非常に画期的かつ研究の大きな進展をもたらすと思われる発見があった。アクチノトリキア形成に必須な遺伝子であるアクチノジン1,2の両方をノックダウンしたときに、アクチノトリキアがヒレに対して垂直に配向するという、全く予想しない形質が現れたことである。ヒレ特有のコラーゲンであるアクチノトリキアの特徴は、一本一本が、平行に、平面的に配向することである。一方、通常の表皮のコラーゲン分子は、それぞれが垂直に交わることで、面としての剛性を担保しており、さらに、表皮よりも内部のコラーゲンは、表皮に対してZ方向に直行することで、立体的な剛性を担保する。この直交するという性質は、コラーゲン分子が本来持つものであり、不思議なことに、魚類のヒレのみにおいて失われている。今回、アクチノジン遺伝子のKOで、アクチノトリキアが直交したということは、アクチノジンの機能が、コラーゲンの直交を阻害することであることを示唆し、それはすなわち、ヒレという平面構造を進化させるキーの要因であったことを示している。現在、アクチノジンKOの安定な系統を作成し、さらに詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要にも記したように、アクチノジンKOにより、アクチノトリキアが直交するという、極めて興味深い形質が出現したことにより、2つの方向で、研究が大きく伸展する可能性が出てきた。 まず、一つ目は、進化的な側面である。通常の表皮のコラーゲン分子は、それぞれが垂直に交わることで、面としての剛性を担保しており、さらに、表皮よりも内部のコラーゲンは、表皮に対してZ方向に直行することで、立体的な剛性を担保する。この直交するという性質は、コラーゲン分子が本来持つものであり、不思議なことに、魚類のヒレのみにおいて失われている。今回、アクチノジン遺伝子のKOで、アクチノトリキアが直交したということは、アクチノジンの機能が、コラーゲンの直交を阻害することであることを示唆し、それはすなわち、ヒレという平面構造を進化させるキーの要因であったことを示している。今後、アクチノジンを、通常はコラーゲンが直交している部位に異所的に発現させることで、アクチノトリキア以外のコラーゲン繊維の配向性に対して、どの様な影響を与えるかを調べる。また、薄いヒレを持たない魚類に対しても同様の操作を行うことで、アクチノジンの進化的な意義を調べていく。 もう一つの重要な点は、この変異体を使うことで、コラーゲンを直交させるための物理的な原理を調べることができるようになったことである。変異体で直交するということは、直交しない通常のヒレのアクチノトリキアを「ネガティブコントロール」として使えることを意味する。今後、この系統を確立し詳細な解析を進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の3つの研究を中心的に行う。 (1)アクチノトリキアが平面に並ぶ(直交しない)原理の解明:この項目は、学術変革A全体の目的に非常に近いため、最も注力する予定である。アクチノジン1,2KO個体のヒレにおいて、アクチノジン、間葉系細胞、骨芽細胞、破骨細胞をそれぞれ染色し、それ等の立体構造をFIB-SEMで解析し、どの様な物理的相互作用があるのかを調べることと、高解像度顕微鏡により動画を撮影することで、垂直配向の仕組みを解析する。これまでに、垂直に配向するアクチノトリキアは、どれも5~10本の束になる、束の間の距離がほぼ一定になる、束の隙間には、カラム状の形態をした間葉系細胞が沿うように配置する、事が解っており、細胞の力学的な動態がキーになっていることが示唆されている。 (2)アクチノトリキアの平面上の配列原理の解明:この項目は前年度からの継続である。アクチノトリキアは、最初、ヒレの縁に均等に並んでいるが、やや内側では、将来ヒレ骨ができる部位のみが存在し、それ以外の部位では消失する。この部分的な消失の原理を明らかにしたい。また、アクチノトリキアの先端部への移動、および、部分的消滅の様子を動画で撮影することに成功しているため、それらの詳細を更に調べることも重要である。 (3)ヒレの進化とアクチノトリキアの配向性の関係:上記の通り、アクチノトリキア(コラーゲン繊維)が平行に並び、直交しないことは、魚類のヒレに限られることであり、アクチノジンとヒレの進化の関係は非常に興味深い。ゼブラフィッシュにおけるアクチノジンの異所的発現と、ハイギョ等の平面的なヒレの存在しない魚種への遺伝子導入により、アクチノトリキア以外のコラーゲンに変化が起きることを期待している。
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Research Products
(7 results)