2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
20H05947
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 康博 京都大学, 工学研究科, 教授 (80442929)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 多細胞力学シミュレーション / 折り畳みと展開 / 生物の面構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、交付決定の遅れにより、当初予定よりも短い研究期間であったものの、次年度につながる数理モデル構築に進展があった。非細胞素材であるクチクラ層と細胞との接着を表す数理モデルを検討し、3Dバーテックスモデルを用いたエネルギー関数による手法を採用した。クチクラ層とそれに一部接着する原基組織の変形の関係について着目し、構築した数理モデルを用いて、シミュレーションによる検討を行った。具体的には、原基組織を覆うクチクラ層との距離を変数にとり、変形過程の特徴を解析した。その結果、クチクラ層に覆われる部分と覆われていない部分が原基組織にあるときに、陥入変形が生じること、この非対称性が大きいほど大きな陥入になることが確認された。また、クチクラ層との接着条件を加えることによって、変形後の原基組織の形状を離散フーリエ変換した際の特定の波長が増強されることが確認された。 次年度は、開発した接着の数理モデルを用いて、実験との共同研究を加速する。新美班によるカブトムシ原基形成の観察から、マクロな折り畳みの形成時には、接着だけでなく、組織の退縮の関与が示唆されている。接着と退縮のそれぞれによる力のバランスによって、マクロな折り畳みができるシナリオは、カブトムシだけでなく、ツノゼミの折り畳み過程にも共通するメカニズムとなる可能性が高い。そこで、現在、新美班と共同で、この作業仮説の検証を数理・実験で行う計画を進めており、現在の数理モデルで可能なシミュレーション検討を深化させるとともに、新たに組織の退縮を表す数理モデルの構築を行う予定である。なお、今年度は、12月から研究開始となったことから、当該研究費による学術講演会での成果発表は次年度から報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、クチクラ層と角原基の細胞との接着の数理モデリングの検討、これまでに開発してきた多細胞シミュレーション(3Dバーテックスモデル)の計算高速化を中心に進めた。 数理モデリングにおいては、3Dバーテックスモデルにおける固定境界条件、変位に対するエネルギー関数を検討し、シミュレーション試行の結果、数値的に安定なエネルギー関数による手法を採用した。クチクラ層とそれに一部接着する原基組織の変形の関係について着目し、構築した数理モデルを用いて、シミュレーションによる検討を行った。具体的には、原基組織を覆うクチクラ層との距離を変数にとり、変形過程の特徴を解析した。その結果、クチクラ層に覆われる部分と覆われていない部分が原基組織にあるときに、陥入変形が生じること、この非対称性が大きいほど大きな陥入になることが確認された。また、クチクラ層との接着条件を加えることによって、変形後の原基組織の形状を離散フーリエ変換した際の特定の波長が増強されることが確認された。 計算高速化について、並列計算プログラムを構築し、初年度に導入した計算機でのシミュレーション効率の向上を確認した。これにより、角原基の先端部など、細かい皺を捉えるシミュレーションが可能となった。つぎに、マクロな折り畳みの形成を捉えるためには、今年度に実施した並列高速化に加えて、粗視化といったモデル改良が必要となることが明らかとなってきた。これについては、新しい数理モデル構築を進めており、今後の研究推進方策に記載する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、開発した接着の数理モデルを用いて、実験との共同研究を加速する。新美班によるカブトムシ原基形成の観察から、マクロな折り畳みの形成時には、接着だけでなく、組織の退縮の関与が示唆されている。接着と退縮のそれぞれによる力のバランスによって、マクロな折り畳みができるシナリオは、カブトムシだけでなく、ツノゼミの折り畳み過程にも共通するメカニズムとなる可能性が高い。そこで、現在、新美班と共同で、この作業仮説の検証を数理・実験で行う計画を進めており、現在の数理モデルで可能なシミュレーション検討を深化させるとともに、新たに組織の退縮を表す数理モデルの構築を行う予定である。 また、マクロな折り畳みの形成を捉えるためには、今年度に実施した並列高速化に加えて、粗視化といったモデル改良が必要となることが明らかとなってきた。この点において、すでに、検討を始めており、角原基の細胞1つ1つを粗視化して、シート全体の変形を捉える数理モデル構築を進めている。次年度の完成を目指し、新美班と共同で原基のCTデータをもとにしたフルスケールのシミュレーションによるモデル検証を行う予定である。
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