2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
20H05949
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 慎太郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70581601)
|
Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
|
Keywords | 構造最適化 / トポロジー最適化 / 形態形成 / 適応進化 / 魚類椎骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の形態は、長い年月をかけた適応進化の結果得られた構造である。その一方で、数学理論に基づいて、工業製品の最適な構造を計算機で導出する設計方法論として、構造最適化が提案、研究されている。生物の適応進化を、環境への適応を目的としたある種の最適化と捉えれば、工学理論である構造最適化を用いて、生物の形態形成の謎に迫ることが可能であろう。本研究の目的は、構造最適化により様々な生物の形態形成の仕組みを解明し、この仮説の成否を検証することにある。
2020年度は、具体的研究テーマとして、「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」「構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現」「構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現」に取り組んだ。研究テーマ「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」では、昨年度、魚類椎骨の基本構造モデルを作成し、そこに様々な荷重条件を与えることで、多様な椎骨の形態が再現できることを確認し、実際の魚類椎骨の標本との比較により、実際の魚の椎骨部にかかる荷重条件の推定に成功した。上記の研究成果をまとめ、論文を執筆し、国際学術雑誌論文に投稿中である。研究テーマ「構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現」では、昨年度、オタマボヤの体表面に沿って垂直2軸に作用する引っ張り力を仮定し、最小の体積でその力に抗するようにセルロースを配置することで、オタマボヤハウスの流入口フィルターの形態を再現する構造最適化モデルを構築し、形態形成の仕組みを説明しうる仮説を得た。研究テーマ「構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現」では、昨年度、エネルギー輸送系における電気化学反応の構造最適化モデルを参考に、カワカイメンの水管構造を再現する構造最適化モデルを構築し、ここから形態形成の仕組みを説明しうる仮説を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、工学分野で研究・開発されている構造最適化理論を用いて、生物の形態形成の仕組みの解明を試みるものである。昨年度は、具体的な研究テーマとして、「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」「構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現」「構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現」を設定し、それぞれについて、構造最適化の観点から形態形成を説明しうる有力な仮説を得た。特に、研究テーマ「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」については、昨年度に得られた研究成果を査読付き国際学術雑誌に論文として投稿し、掲載に向けて論文の修正を行っている状況にある。以上より、本研究は、概ね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果を元に、今年度も引き続き、研究テーマ「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」「構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現」「構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現」に取り組む。研究テーマ「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」「構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現」については、構造最適化の理論により、形態形成を説明しうる有力な仮説が得られており、今年度は実験系班員と協力して、実験による仮説の検証を行う。すなわち、研究テーマ「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」については、構造最適化モデルで推定される荷重モードが実際に魚類の椎骨に作用しているのかを、実験により検証する。魚類の椎骨に作用する荷重を工学的手段で直接計測することは困難を極めるため、魚類の運動を制御する因子を操作し異なる荷重条件が椎骨に作用する状況を意図的に作り、その差異を観察することで、検証を行う。研究テーマ「構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現」についても、オタマボヤの体表面に作用する荷重を直接計測するのではなく、体表面に生じる力の源となる因子を操作することで、オタマボヤハウスの形態形成がどのように変化するのかを観察し、検証を行う。研究テーマ「構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現」に関しては、一般的なカワカイメンの水管構造に似た構造を、構造最適化により創出することには成功しているが、現実の水管構造のバリエーションを高い忠実度で再現するには至っておらず、構造最適化モデルにおいて与えられる各種パラメータが、水管状の構造を創出するにあたり及ぼす影響をパラメータスタディにより調査し、決定的な影響を与える因子の特定に取り組む。上述のように、今後の研究を推進していく予定である。
|