2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Quantum cybernetics - interdisciplinary studies of quantum controls and developments toward quantum computing |
Project/Area Number |
21102005
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 義朗 京都大学, 理学研究科, 教授 (40226907)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 哲哉 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研, 主任研究員 (70393775)
|
Keywords | 原子・分子物理 / 超精密計測 / 超伝導材料・素子 / 量子エレクトロニクス / 量子コンピュータ |
Research Abstract |
「光格子」を用いた京大グループのアプローチでは、光格子中Yb原子に対して研究を行った。具体的には以下の通りである。1)2次元系のYbボース凝縮体を安定に生成するシステムを帯意することに成功し、その原子系に、光格子ポテンシャルを印加し、2次元での超流動・モット絶縁体転移を観測した。さらに大きな2次元的磁場勾配および光強度の勾配を印加することが可能な系を用意することに成功した。また、「光格子」を用いたハバードモデルの量子シミュレーション研究では、 2)SU6フェルミ粒子(173Yb)のポメランチュク冷却を、初期温度やスピン自由度を様々に変化させて測定し、確認することに成功し量子磁性の領域に非常に近いことを見出した。 さらに、量子制御では、3)レーザー冷却した171Yb原子のスピン集団に対して、純光学的な高速量子フィードバック制御を行い、エントロピー制御的の観点からも量子フィードバックに成功していることを確認した。 一方、NTT物性科学基礎研究所では、超伝導磁束がアトムチップに捕捉された原子に与える影響を解明する為に、超伝導の純粋状態と混合状態における超伝導チップ表面近傍の磁場を、冷却原子により計測した。その結果、超伝導体表面への原子の掃き寄せ効果、及び、超伝導磁束の不均一分布とその崩壊現象の温度依存性を確認した。また、冷却原子が超伝導体表面と破壊的に相互作用することを確認すると同時に、これを蒸発冷却に利用出来ることを、表面からの高さに依存した捕捉原子数、及び、温度の変化によって実証した。更に、超伝導体中にピン留めされた磁束の配列を制御することで、原子導波路への応用が期待できる積層マイクロディスク型超伝導チップを考案し特許出願した.スピン制御の研究でもスピン自由度を持ったRb原子のBECを生成し、対向して運動するBECの安定性の研究を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京大グループでは、予定していた課題、すなわち、2次元ボース凝縮の2次元光格子導入と高安定磁場勾配印加システムの構築、SU(6)モット絶縁体の確認、スクイーズドスピン状態の純光学高速量子フィードバック制御による決定論的スクイーズドスピン状態の生成、のすべてを実現できている。一方、NTTでは、2011年の震災による省電力対応により、実験室の空調温度が一定に保たれず、主要なレーザーの故障が発生すると同時に、光学系を中心に度重なる調整が必要となった。これにより、事実上、研究の進捗ができない状況が長期に及んだが、着実に結果を挙げることに成功した。スピン制御の研究でもスピン自由度を持ったRb原子のBECに関して、対向して運動するBECめ安定性について新しい知見を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、特に大きな変更は必要なく、当初の計画通り進めることで、研究も目的を達成できると考えている。特に、光格子点の単一観測・操作の準備はほぼ完成しており、あとは、実際に実験を行うことで達成できると考えている。さらに、様々な研究者と積極的に共同研究を展開することを計画している。NTTでは、超伝導アトムチップに捕捉された原子のコヒーレント制御を目的に研究を進めている。学習院大学のスピン制御の研究も着実に進展しており、京都大学(高橋研)、学習院大学(平野研)、大阪大学(井元研)との研究協力体制を強化することで、研究の進捗を図りたいと考える。
|