2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Quantum cybernetics - interdisciplinary studies of quantum controls and developments toward quantum computing |
Project/Area Number |
21102008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小芦 雅斗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90322099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 俊 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 准教授 (10403130)
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Keywords | 量子もつれ / 波長変換 / W状態 / 単一光子 / 差周波発生 |
Research Abstract |
量子情報の情報処理や保存を行う技術の多くは、情報の運び手である光と結び付ける際に、可視光領域にある特定の波長を用いなければならない。一方、長距離量子通信には、光ファイバの損失が小さい近赤外領域の通信波長帯の光子が不可欠であるため、異なる波長領域をまたいで量子情報を変換する量子インターフェースが重要となる。光非線形結晶における差周波発生を用いて周波数の下方変換を行う量子インターフェースを構築し、波長780nmのピコ秒単一光子を1522nmの光子に変換する実験を行った。変換された光の強度相関測定によって、入力単一光子の持つ非古典光性が変換後も保たれていることを確認した。さらに、入力光子が別の光子と量子もつれを持つ状態を準備して下方変換を行い、波長変換後も量子もつれが残っていることが確認できた。これは、異なる波長の光子に量子情報が確かに受け渡されていることを示す。疑似位相整合を用いた差周波発生では、入力光の波長を広範囲の可視波長から選択可能であり、帯域幅も広くとれる利点があるため、我々の量子インターフェースは長距離量子通信の実現に向けて有用な技術であると考えている。 多数の粒子間の量子もつれを生成する場合、粒子を次々に追加して行くことで量子もつれ状態のサイズを徐々に大きくしていく方法は必ずしも効率的ではなく、とくに粒子の追加操作が確率的な場合にはそれが顕著である。より効率的であると考えられるfusion操作では、既に量子もつれ状態にある粒子のグループ2つを融合してサイズが約2倍の量子もつれ状態を作る。今回我々は、光子のW状態の場合にこのfusion操作を行う簡単な手法を提案し、その効率を見積もった。上記の逐次追加の方法では、原理的にリソースの消費量が指数的になってしまうが、今回提案したfusion操作を使えば、この消費量の増え方が指数的ではなくなることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通信における量子制御に関しては、長距離量子通信に必須な光波長領域と、量子情報を処理する際に必要となる波長とのギャップを埋める技術を提示できた。多キュビット量子制御については、多光子W状態の生成について、従来より効率の良い手法を提案した。また、雑音から保護しながら量子テレポーテーションを行う多光子プロトコル実験を進めており、予備実験まで終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、雑音から保護しながら量子テレポーテーションを行う多光子プロトコル実験を中心に進めていく。これは、通信における量子制御と、多キュビット量子制御という本研究目的の2つの柱にまたがる原理実証実験に位置づけられる。
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