Research Abstract |
本年度は下記の3点に関する成果が得られた.以下それぞれについて説明する. ・死亡時画像データペース ・計算解剖モデル ・骨折検出支援システム 1)死亡時画像データベース 本年度は,約130名の死体に対してスライス間隔1mm程度の高精細CT像を撮影し,それらのデータベース化を進めた.これにより,初年度とあわせると合計で約180例分の死亡時画像が蓄積された.また,計算解剖モデル作成や診断支援システム開発のために,画像内の肝臓と肺の領域ラベルをマニュアルで入力する作業も並行して進めた. 2) 計算解剖モデル 本年度は,レベルセット関数に基づいて表現された肝臓と肺の統計的形状モデルに注目し,死体と生体のモデルの違いを明らかにした.その結果,平均的な意味では,生体用のモデルであっても死体の形状を上手く表現できることが分かった.この成果は,生体用のモデルを死体用に変換する次年度以降の研究のための重要な基礎データとなる. 3)骨折検出支援システム 骨折検出のためには,まず,骨の精密抽出が重要となる.これまでにアンサンブル学習を応用して骨を抽出する処理を開発したが,撮影条件の違いによるCT値の変動により,抽出精度に問題があることが分かった.そこで本年度は,骨のクラスとそれ以外の組織のクラスについて密度関数を推定し,それらから計算される尤度比を用いることでCT値の変動を吸収することを試みた.今回は混合正規分布と仮定して,そのパラメータを実際のデータから推定したが,従来の方法を実際のデータに適用すると,二つのクラスの分布が重なる範囲において推定が上手く行かないことが確認された.そこで,骨の位置に関する事前知識を利用する推定法を新しく考案した.現在までに実際のデータを用いて評価したところ,従来よりも推定精度が向上し,その結果,骨の抽出精度も向上することが確認できた.
|