2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Extreme quantum world opened up by atoms -towards establishing comprehensive picture of the universe based on particle physics- |
Project/Area Number |
21104005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
酒見 泰寛 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (90251602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 貴稔 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (30328562)
畑中 吉治 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (50144530)
若狭 智嗣 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (10311771)
畠山 温 東京農工大学, 工学研究院, 准教授 (70345073)
伊藤 正俊 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教 (30400435)
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Keywords | 電気双極子能率 / 時間反転対称性 / CP非保存 / 超対称性 / フランシウム / レーザー冷却 / 表面電離型イオン源 / 磁気光学トラップ |
Research Abstract |
物質・反物質非対称性(CP非保存)の機構解明をめざし、基本粒子(電子)における高精度電気双極子能率(EDM)探索技術を確立することが本研究の目標である。素粒子標準模型では、電子EDMの大きさはきわめて小さく、また標準模型を超える様々な理論では、新しい対称性・超対称性とその破れの効果により予測されている超対称性粒子の伝搬により、有限のEDMが存在することが予測されている。電子EDMの探索は、CP非保存や時間反転対称性、そして超対称性といった基本対称性とその破れの機構を探る敏感なプローブの一つである。 本研究では、電子EDMの増幅度が最大である放射性元素フランシウム(Fr)に着目し、Frを原子核反応で生成し、オンラインでレーザーを用いて急速冷却、そして高真空中にFrトラップして測定する。EDMの測定には、磁場と電場によるスピン歳差運動の周期を高精度で測定する必要があるが、その精度は、測定原子の個数、スピン偏極保持時間、印加電場・磁場の一様性等で決まってくる。本研究では、レーザー冷却された大強度Fr原子を高真空中に局在化させてトラップすることで、外場の一様性を確保し、さらに光で形成される格子上のポテンシャルに、1個づつ原子を配置することで、トラップ原子間の衝突を緩和して長い偏極保持時間を実現する。 今年度、融解標的を用いた表面電離型イオン源の開発に成功し、融合反応を用いた方式では世界最高強度のFrおよび引き出し効率を実現した(2011年6月ベルギーで開催の国際会議・ARISで成果報告)。さらに原子をトラップ・冷却し、その原子を後段の磁気光学トラップ(MOT)へ移送するダブルMOTも、Rbを用いて原子トラップ・怜却・輸送を確認し、その技術確立を進めた(国際会議・FPUA2011で成果報告)。またFrの冷却・トラップに必要なレーザー光源、そしてそれらの周波数安定化等の開発を進め、光源に関しての整備をほぼ完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験の鍵となる大強度Fr生成とレーザー冷却Frトラップという2つの鍵となる実験技術のうち、一番目の大強度Fr生成に関しては、融解型高温標的を用いた表面電離型イオン源の開発成功により、融合反応を用いた方式として国際的にも最高水準の性能を実現し、実験に必要なFr収量に見通しをつけた。また2番目のレーザー冷却Frトラップについては、震災により加速器施設の損壊にともなってFr生成・供給が停止した状態ではあるものの、Frと化学的性質が類似した同じアルカリ原子であるRbを用いて、計画通りに装置開発を進め、FrのEDM測定に必要な2つのMOTによる予備冷却+輸送+バッファリングの一連の原子操作をRbを用いて実現し、この鍵となる実験技術を確立した。このように、予定通り、EDMの測定に向けた装置開発は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Frの大強度生成、そしてレーザー冷却・トラップ技術の確立は行ったので、最終段階であるEDM測定に向けて、今後1年間、測定装置の開発を重点的に行う。測定装置は、磁気光学トラップ装置に蓄積したFrを光双極子力を用いて測定用セルに移送する構造と、磁気シールド、そして、光トラップ装置の3つで構成される。この3つの装置の開発を進め、震災の影響で加速器が停止しているが、その復旧が完了次第、すべての装置を上流から下流まで連結し、オンラインでのFr生成・輸送・冷却・トラップ・光による移送・歳差運動の観測、という一連の測定プロセスを行って、全体の運転テストを実施する。
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Research Products
(14 results)