2011 Fiscal Year Annual Research Report
多彩なフレーバーがもたらすクォークハドロン物質の新形態に関する理論研究
Project Area | Quest on new hadrons with variety of flavors |
Project/Area Number |
21105006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
保坂 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10259872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 幸子 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (90251503)
原田 正康 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40311716)
菅沼 秀夫 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10291452)
森松 治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (60210184)
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Keywords | エキゾチックハドロン / 量子色力学 / カイラル対称性 / パイオン / 格子QCD / パートン分布 / 生成、崩壊反応 / フレーバー |
Research Abstract |
研究成果では、まずハドロン分子状態の理解に大きな進展があった。重いクォークを含む系で、重いクォーク対称性によってパイオン交換力がより重要になることを示し、テンソル力がもたらすチャンネル結合が系により安定な解をもたらすことを示した。その結果、昨年KEK-Belleで発見されたZb粒子の性質が自然に説明できることを示した。2つ目に、格子QCDによるクォークポテンシャルの計算で、閉込め力の起源が明らかにされたことがあげられる。Diracの射影演算子によって閉込め力への寄与を分解し、閉込め機構には低エネルギーモードの寄与は重要でないことを示した。このことはカイラル対称性の自発的破れを引き起こす低エネルギーモードとは独立に閉込めが起きることを示唆している。その他ホログラフィックQCDにより核物質の性質を調べる方法が提案された。定量的には今後一層の改善が必要だが、QCDの非摂動力学が原子核のレベルでどのように発現しているのかを突き止める上で重要と考えられる。 理論研究のもう一つの重要な役割は、異分野間の交流を進めることと若手育成である。前者では、新学術領域研究「素核宇宙融合」と共催で「クロスオーバー研究会」を開催し、2つの領域研究者による意見交換を深めた。特にQCDのもたらすハドロンの様々な存在形体に関して、有効構成子の意味を問う本質的な議論が交わされた。これはハドロンの構造を真に理解する上できわめて重要な視点である。また、若手育成では当初計画通りサマースクールを実施するとともに、一作年度のサマースクールの内容を講義録として、コミュニティー雑誌「原子核研究」に出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず昨年度は領域全体としての外部評価を行い、委員の方々から、本領域研究を一層進めることが重要であるとの評価を受けた。これをもとにした、領域中間評価ではA+の評価を受けた。実験研究が大部分を占める本領域では、実験研究での連携と今後の計画推進、また、これまでの成果が高く評価されたことに加え、前項で説明した成果内容を根拠に、本計画研究での理論研究の活動が大いに貢献したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、各研究分担者と研究支援員、大学院生などによる個々の研究グループによる研究を進める。これまでにおのおのが理論的な手法を確立するところから出発したが、現在までに一定の方向が定まりつつあるので、今後はより構造の理解に向けた研究を進める。特に以下の点に着目する。(1)ハドロン分子とクォーク構造の共存、(2)ホログラフィックQCDによる非摂動効果のハドロン多体系における役割の解明、(3)格子QCDから得られたクォークポテンシャルによるハドロン分光、(4)高エネルギー反応で得られた分布関数によるエキゾチック構造の解明、(5)ハドロンの生成過程におけるハードプロセスからソフト領域への遷移、などの項目の研究を進める。
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Research Products
(37 results)