2011 Fiscal Year Annual Research Report
集積化アルキンの反応制御による新奇芳香族化合物の創出
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
21106011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸部 義人 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60127264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 一邦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40432463)
梅田 塁 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (70467512)
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Keywords | 反応集積化 / 芳香属化合物 / 環状アセチレン / 渡環境化反応 / クロスカップリング反応 / ゼトレン / インデノフルオレン |
Research Abstract |
同一時空間反応集積化の概念に基づき、集積化アルキンから以下の新奇芳香族化合物の合成を行った。 (1)拡張ゼトレン型芳香族化合物の新規合成法の開拓と機能 これまでの本研究課題において、デヒドロベンゾ[10]アヌレンへの求電子攻撃により誘起される渡環環化により、安定なゼトレン誘導体の合成法を開拓した。23年度は得られたゼトレン誘導体からの高次類縁体の合成を行った。すなわち、ゼトレン骨格が伸長されたダブルゼトレン、テトララジカル性を示すと期待されるブタジイン架橋ゼトレン誘導体およびゼトレンよりもさらに高いビラジカル性を示すヘプタゼトレン誘導体である。これらのうち、ダブルゼトレンの合成には至っていないが、鍵中間体となるテトラエチニルナフタレンの合成を達成した。また、ブタジイン架橋ゼトレンの合成を達成しその物性研究を行った。さらにヘプタゼトレン誘導体の合成にも成功した。 (2)インデノフルオレン系芳香族化合物の新規合成法の開拓と機能 これまでの本研究において、デヒドロベンゾ[14]アヌレンへの求核攻撃により誘起される三段階の連続渡環環化と二量化を経由するインデノフルオレン二量体への変換法を見出した。この特異な反応の一般性を調査するため、他のデヒドロベンゾ[14]アヌレン誘導体についても同様の反応が生起するかについて調査した結果、反応の一般性が確認された。一部の高次類縁体では、空気酸化されてさらに環の数が増加した生成物が単離された。また、本反応の中間体として想定されるビラジカル性を有するインデノフルオレンの安定な誘導体の合成を行い、そのビラジカル性を中心とする物性調査を行った。 また、プロモインデノフルオレンを発生させその二量体の合成を行った。これは上記の異常反応の機構の解明と有機薄膜太陽電池のアクセプターとしての機能の観点から、今後につながる重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・拡張ゼトレン型芳香族化合物の新規合成法の開拓と機能については、ダブルゼトレンの合成には至っていないが、それ以外の課題については計画通りの成果が得られた。 ・インデノフルオレン系芳香族化合物の新規合成法の開拓と機能については、異常な二量化反応の機構の完全な解明には至っていないものの、意図的に行った二量化反応によるインデノフルオレンダイマーの合成や、立体保護を用いたインデノフルオレン誘導体の単離、構造研究という新たな発展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
・拡張ゼトレン型芳香族化合物の新規合成法の開拓と機能については、テトラエチニルナフタレンを出発物質とする新たな芳香族骨格への変換の可能性を追求する。また、合成に成功したヘプタゼトレンの構造や物性について調査する。 ・インデノフルオレン系芳香族化合物の新規合成法の開拓と機能については、異なる環構造を有するインデノフルオレン類を合成し、新奇な物性の解明を目指す。インデノフルオレンダイマーの物性や有機薄膜太陽電池への応用に関して調査する。異常な二量化反応の反応機構の解明については、ビラジカル性が関与していると予想されるため、通常の量子科学計算方法では解明が困難である可能性がある。専門家に意見を求めて解決の糸口を求めたい。
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