2011 Fiscal Year Annual Research Report
集合化を特徴とする動的酸化還元系分子の集積合成:次元的秩序性の外部刺激制御
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
21106012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 孝紀 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70202132)
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Keywords | フロー合成 / 集積合成 / 空間的集積 |
Research Abstract |
フローマイクロリアクターによる空間的集積は、アリレンジハライドの選択的なモノリチオ化と、生じた活性種の異なる求電子剤との段階的な反応を可能とする。このようにして非対称性を導入されたヘキサアリールエタン誘導体では、対称型化合物には見られない特異な物性の発現や構造的特徴を示すことが期待される。23年度には、標題化合物を効率的にフロー合成し、対称型化合物のみの研究では明らかにできなかった極度に伸長したC-C結合長への置換基効果についての詳細な検討を行った。5,6-ジブロモアセナフテンを出発物とし、フローマイクロリアクターによってBuLiと4,4'-ジメトキシベンゾフェノンを段階的に反応させる際の条件検討を行い、混合後のリアクター長を最適化することで、74%の収率で一置換体を選択的に合成することできた。次に、先の最適条件を用いて、3種類の非対称二置換体a, b, c(置換基X, Y)の合成を行った。いずれもXとしてアニシル基とし、aではYとしてトリル基、bではYとしてフェニル基、cはではYとしてクロロフェニル基を持つケトンを用いてフローマイクロ合成を行い、非対称置換ジオール体の粗生成物を得、環状エーテルとして精製し、それぞれ良好な収率で得ることに成功した。得られた環状エーテルを強酸性脱水条件下でジカチオン塩とした後、THF中でZn還元することにより、目的の非対称1,1,2,2-テトラアリールピラセンを76%、81%、75%の収率で得た。これらはいずれも安定な薄黄色結晶であり、蒸気拡散法でX線構造解析に適した単結晶を得て、低温X線構造解析により、その詳細な分子構造を決定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非対称化合物のでの1.7オングストロームを越える結合長を厳密に決定できた。それにより非対称化合物では、対応する2種類の対称化合物のどちらよりも長くなる場合やどちらよりも短くなる場合があることが明らかとなった。これは、結晶中での結合長が、アリール基上の置換基の電子的効果によって決定付けられていないことを示す重要な結果である。溶媒を含む多形ついての構造解析から、非溶媒和結晶に比べて、更に長い結合を示す場合を見出した。これは、極めて長いC-C結合は結晶中の分子充填の影響で容易に長さが変化するほど伸縮性があることを示す結果と考えられる。即ち本研究で研究対象としたテトラアリールピラセンの極度に伸長したC-C結合は、結合解離エネルギーが元々小さく、結合を更に伸ばすのに非常に小さなエネルギーしか必要ではない為にこのような伸長性を持つと結論できた。
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Strategy for Future Research Activity |
80年代、push-pull置換の効果によって結合伸長が起こる可能性が提案されているが、これまで実験的な証明はなされていない。結合長に対する摂動を受けやすい本研究の骨格に強い電子供与性・求引性置換基の両方が導入された非対称化合物の合成ができれば、push-pull置換基の効果を立証できる可能性がある。また、長い結合の両端に13Cを導入された化合物を合成することで、非対称化合物のNMRスペクトルでの13C-13C結合定数から、溶液中での構造情報も得ることができると期待される。このように縮合ヘキサフェニルエタンでは非対称化合物でしか推進できない研究が多くあり、その物質供給に欠かすことのできないのが、フローマイクロ合成法なのである。本手法を用いて、更なる検討を行う。
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Research Products
(4 results)