2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機磁性材料の構築を目指したポリジアゾ化合物の集積合成
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
21106013
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北川 敏一 三重大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20183791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 克幸 三重大学, 社会連携研究センター, 准教授 (80208793)
岡崎 隆男 三重大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90301241)
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Keywords | フローリアクター / 反応集積化 / カルベン / 立体保護基 / ジアゾメタン / 薗頭カップリング / 光反応 / イオン液体 |
Research Abstract |
1.フローリアクターの利用は反応集積化の有効な手段である。本研究では、立体保護基を持つジフェニルカルベンの反応挙動をフローリアクターにより検討した。バッチ系(ベンゼン溶液)で前駆体ジアゾメタンに光照射した場合には、主生成物の一つとして9,10-ジアリールフェナントレンが得られた。これは発生したカルベンの2量化により生成したテトラアリールエテン中間体が環化した結果と考えられるが、この中間体は検出されなかった。一方、フロー系で光照射した場合には、バッチ条件に比べて1/40の短時間で脱窒素が完了し、テトラアリールエテン中間体の生成をNMR分析により確認できた。これは、フロー系による短時間照射による光反応条件を用いたため、テトラアリールエテン中間体の二次的光反応が抑制された結果と考えられる。これにより、フローリアクターがカルベンが関与する反応系で光に敏感な生成物を得るために有効であることが示された。 2.カルベン前駆体であるジアゾ化合物を段階的に多数連結してポリジアゾ化合物を合成するには、各段階の連結反応を高収率で能率的に行わなければならない。そのための合成手段として、イオン液体中での薗頭カップリング反応が有効と期待される。そのための予備時実験として、i)パラ位にヨード基を持つベンゾフェノン誘導体に対するTMSアセチレンの薗頭カップリング、ii)TMS基の除去、iii)得られたアセチレンと1,3,5-トリヨードベンゼンとの薗頭カップリング、の3段階合成について、イオン液体[BMIM][Tf_2N]を溶媒とするワンポット合成を行い、期待されたデンドリマー型トリケトンを得ることに成功した。これにより、多段階クロスカップリングの時間的反応集積化によるポリジアゾ化合物合成の基盤が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、ポリジアゾ化合物の集積合成をa)単一成分薗頭カップリング反応による多量体合成、b)イオン液体中での薗頭カップリング反応による集積合成、の二面から進めている。a)に関しては、これまでに重合度8のジアゾ化合物の合成を達成した。b)に関しては、ジアゾ化合物のモデルであるケトンを用いた集積合成によりデンドリマー型トリケトンの合成に成功した。以上、ポリジアゾ化合物の合成に向けて進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のa)に関しては、今後はさらに重合度の高い生成物を得るためにモノマーの継手置換基及び立体保護基の種類と配置を最適化する。なお、薗頭カップリング反応条件でエチニル基の酸化的ホモカップリングが起こるとポリカルベンが低スピンとなり、有機強磁性体を形成できなくなるため、ホモカップリングを抑制できる反応条件を探索したうえで合成を進める。b)に関しては、今後ワンポット合成の反応段数を上げて時間的反応集積化を進め、高次デンドリマーを合成する。また、ポリケトンの合成実績を踏まえてジアゾ体のカップリングを行い、デンドリマー型ポリジアゾ化合物を合成する。この合成に際して、化学的に変化を受けやすいジアゾ基が影響を受けない条件をあらかじめ確立する必要がある。
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