2009 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス活性錯体クラスターによる双安定性結晶・液晶・液体場の創成
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
21108007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
張 浩徹 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 准教授 (60335198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 昌子 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (80214401)
小林 厚志 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (50437753)
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Keywords | 相転移 / レドックス / 金属錯体 / 液晶 / 金錯体 / カラムナー液晶 / 構造揺らぎ / クロミズム |
Research Abstract |
本研究「レドックス活性錯体クラスターによる双安定性結晶・液晶・液体場の創成」では、多段階のレドックスを示すクラスター(分子会合体、多核錯体)を創成し、電気化学的レドックス反応による多段階エレクトロクロミック物質や多段階スピン状態の電気化学的変換を実現する。更にこれらのクラスターから成る結晶・液晶・液体場を形成しクラスターレベルの物性変化が固体⇔液晶⇔液体間の相転移や機械的運動、流動性やぬれ性変化等の巨視的物性と同期した多重機能性物質を構築しうる配位プログラミングを発展させることを目的とする。 本研究で対象とする[Pt(R-Bdt)(C8,10bpy)](Bdt=benzenedithioato,C8,10bpy=3-octryl-tridecyl-4,4'-bipyridine)は室温付近において安定なヘキサゴナルカラムナー液晶を形成する。我々は、結晶-液晶-液体の双安定化を設計・発現すべく、これらの液晶分子内に本質的に存在する構造揺らぎとガラス相-ソフトクリスタル相-液晶相-液体相というこれらの液晶が示す相転移に伴う構造揺らぎと発光、吸収特性という電子機能の相関を明らかにした。H21年度においては、これらの液晶が基底状態における極性電子構造に基づきネガティブソルバトクロミズムを発現することで溶媒-分子相互作用によるフロンティア軌道制御を実証した。また興味深いことにこれらの液晶分子は液晶相等において高い自己会合性を示し、この結果、溶液中におけるソルバトクロミズムに対応するサーモクロミズムを発現した。これは、極性液晶分子間の双極子-双極子相互作用に基づき、その自己会合能を熱的に自調することで発現することを示す。またXRD回折の解析により室温付近において数十分子の会合が生じ、熱的にその会合数が減少することでサーモクロミズム(フロンティア軌道制御)が発現することを見いだした。また、アルキル部位の揺らぎの凍結により発光能が上昇することで、構造揺らぎと電子機能の直接相関と制御が可能であることを示した。この揺らぎは結晶性分子のドーピングにより抑制されドープ率35%において不連続的に発光特性がスイッチすることも併せて見いだし、熱的に液晶分子の双安定化に成功した。更に我々はこれまでに展開した中性のレドックス活性白金・パラジウム錯体液晶に加え、レドックス活性イオン性液晶を創成するべく、Au(III)を用いたイオン性錯体,[Au(L)(R-bpy)]・Anion(L=Cl,Bdt;Anion=[AuCl4]-,PF6-)の合成を確立した。これらはAu(III)の還元を抑制する限定的条件下でのみ得られるが、その合成を高い収率で行える諸条件を見いだした。更に興味深いことに、これらは対アニオンにより発光・非発光性を発現し、アニオン種による特性制御の可能性を確認した。またかさだかいPF6アニオンを用いることで融点を150℃近く低温化しうることも見いだし、イオン性錯体のアニオン種による構造、機能制御、双安定化しうる基盤を築く研究成果を得ることに成功した。
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