2012 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms of allo-recognition in the Brassicaceae
Project Area | Elucidation of Common Mechanisms for Allogeneic Authentication in Animals and Plants |
Project/Area Number |
21112003
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
岩野 恵 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50160130)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アブラナ科植物 / 自家不和合性 / カルシウムシグナリング / TILLINGリソース / 自家不和合性シロイヌナズナ / ライブセルイメージング / プロトプラスト |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物の多くは、自家不和合性として知られるアロ認識機構を有し、遺伝的に異なる同種異個体と選択的に受精することで、種の遺伝的多様性を維持している。申請者は、アブラナ科植物において、このアロ認識が花粉表層のSP11リガンドと雌ずい乳頭細胞膜上のSRK/MLPK受容体複合体との相互作用を介して行われていることを明らかにしてきた。さらに最近、自家受粉時の乳頭細胞内で、Ca2+濃度の急激な上昇とアクチンの脱重合が起きることを明らかにした。Ca2+濃度の上昇とアクチンの脱重合はこれまで異なるアロ認識機構を持つとされてきたケシ科植物の自家受粉時の花粉内でも観察されており、さらに本領域代表者の澤田らにより原索動物ホヤのアロ認識にもCa2+の関与が見出されたことから、申請者は動植物のアロ認識に共通する機構としてCa2+シグナリング系の関与を提案している。今年度までの研究により、自家不和合性を付与したシロイヌナズナを利用して、乳頭細胞特異的発現遺伝子群や和合・不和合受粉時特異的発現遺伝子群を同定した。また、新規の乳頭細胞Ca2+モニタリング系や、乳頭細胞プロトプラストによる薬理学的解析系の構築に成功した。その結果、自家受粉時には、SRKとSP11との相互作用により乳頭細胞内でCa2+濃度上昇が引き起こされることと、Ca2+濃度上昇が直接自己花粉の拒絶を誘導することを示唆した。 形質転換による安定的な自家不和合性シロイヌナズナの作出は、コロンビア株やランズバーグ株では成功していない。本研究のC24株は安定的な自家不和合性を示すが、タグラインなどが完備していない。そこで逆遺伝学的解析ツールとして、C24株Tillingリソースを作製した。これにより、マイクロアレイ解析や薬理学的解析により得られた候補遺伝子の機能解析が迅速に進むと期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに乳頭細胞プロトプラストの薬理学的解析系を構築し、SRK下流のシグナル伝達系で機能するCa2+輸送体の探索を行なった。また、マイクロダイセクション・マイクロアレイ解析による乳頭細胞特異的発現遺伝子群や和合・不和合受粉時特異的発現遺伝子群の同定を行ない、候補遺伝子の探索を行なった。その結果、数種の候補遺伝子が得られたが、これら候補遺伝子の機能解析のためには、遺伝子破壊株による機能解析が必須である。これまではRNAiライン等の発現抑制株を用いた機能解析を主に行なってきた。しかし、24年度にA. thaliana C24由来のTILLINGリソースを完備できたことで、候補遺伝子の変異体の利用が容易になり、機能解析が予想以上に進展することが期待できる。 これらとは別に、申請者はシロイヌナズナの受粉から受精に至る一連の生殖過程における花粉と雌蕊のカルシウムイメージに成功した。その結果、花粉管ガイダンスから花粉管バーストにおいて、助細胞からの誘引物質に反応して花粉管のカルシウム変動が誘起されること、花粉管からの刺激に反応して助細胞でオシレーションが起こることを見出した。以上の結果は花粉管と助細胞との相互作用にカルシウムシグナル伝達系が存在することを示唆した。動物の生殖過程においては、卵細胞からの誘引物質が精子のカルシウム変動を誘起することが知られており、申請者の発見は動植物アロ認証における新たな共通性を示すものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後本申請では、SPS11リガンドとの結合により誘起されるSRK受容体下流の自家不和合シグナル伝達系を明らかにすることを目的として、以下の解析を行う。 1)自家受粉時特異的なCa2+濃度上昇は同じSハプロタイプのSP11により誘起されることが明らかになった。しかし、SRKリン酸化との関係はまだ明確ではない。そこで、その関係を調べるために、自家不和合反応で誘起されるリン酸化タンパク質や細胞膜マイクロドメイン構成タンパク質のプロテオミクス解析を行ない、自家不和合シグナル伝達に関わるタンパク質について生化学的探索を行なう。これについては、名古屋大澤田先生との共同研究により進める。 2)マイクロダイセクション・マイクロアレイ解析やプロトプラストの薬理学的解析により同定された自家不和合シグナル伝達に関わる候補因子の機能解析を行なう。具体的には、我々が新たに作製したArabidopsis thaliana C24系統TILLINGリソースを用いて、候補遺伝子の突然変異体をスクリーニングし、和合・不和合受粉時の表現型解析を行なう。さらに、相補試験、GFPイメージングと免疫電顕による候補分子の局在解析、FRET・BiFCによるSRKとの相互作用解析などを行ない、自家不和合性との関連を調べる。さらに、これまでに自家不和合反応時においてイオン輸送体が関与することが示唆されている。そこで、その輸送体の性状を明らかにするために、電気生理学的解析を行なう。これについては、山口大岩尾教授との共同研究により進める。 3)シロイヌナズナの自家不和合性は、自家和合反応と表裏一体の関係にある。そこで変異源処理したシロイヌナズナ種子を用いて受粉過程で変異のある植物体のスクリーニングを行なう。
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Research Products
(9 results)