2011 Fiscal Year Annual Research Report
計算科学による核内タンパク質天然変性状態の構造多型解析
Project Area | Target recognition and expression mechanism of intrinsically disordered protein |
Project/Area Number |
21113006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
肥後 順一 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任研究員 (80265719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 誠 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (50195210)
高野 光則 早稲田大学, 先進理工学研究科, 准教授 (40313168)
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Keywords | フォールディング / ドッキング / 自由エネルギー地形 / 計算機シミュレーション / 全原子モデル / 粗視化モデル |
Research Abstract |
(1)前年度(22年度).までに天然変性蛋白質NRSFとそのパートナー分子mSin3のcoupled folding and binding(CFB)の自由エネルギー地形を全原子マルチカノニカル分子動力学(全原子McMD)法により得ていたが、本年度(23年度)は、自由エネルギー地形の詳細を解析し論文発表した(JACS)。さらに、天然変性蛋白質の名称を広く世に知らしめたpKID-KIX複合体(pKIDが天然変性蛋白質)に対して全原子McMD法を適用し、CFBの自由エネルギー地形を求めた(Biomoleculesに論文発表)。これらのシミュレーションでは、天然変性蛋白質は初期構造として変性状態にしておき、かつパートナー分子から離れたところに配置した。さらに、天然変性蛋白質とパートナー分子の周囲を、充分な溶媒分子で取り囲んだ。全原子McMD.は、天然変性蛋白質とパートナー分子の解離状態と結合状態の両方を高い統計性で探索できる。これにより、全原子McMD法による天然変性蛋白質へのアプローチがうまく行くことを示した。 (2)より大きく複雑な系に対して全原子McMDを適用可能にするために、仮想系とカップルさせた全原子McMDを開発した。単純な物理系に対して良い結果を得たので現在論文準備中である。現在水中での生体高分子間相互作用に適用して、シミュレーションを続行中である。 (3)NRSFとmSin3の結合過程の時系列を知るために、全原子McMD法から得た多数の構造集団から、特徴的な構造(NRSFとmSin3の結合が起こる寸前の構造)を抜き出しカノニカル分子動力学を行った。その結果、NRSFが構造変化を伴いつつ、mSin3と複合体を形成することが観察された。現在統計性を増す努力を行っている。 (4)高度に粗視化されたモデル(Wako-Saito-Munoz-Eatonmodel)を用いNRSFとmSin3のCFBを再現した。エネルギー地形に包含されたフラストレーションが天然変性蛋白質の構造多様性の引き金になることを示した。この研究は、全原子McMD法により得られる複雑な自由エネルギー地形からより本質的な因子を抜き出す上で重要である(現在論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全原子マルチカノニカル分子動力学で2つの複合体系(NRSFとmSin3の系、およびpKID-KIXの系)の自由エネルギー地形を明らかにした。これは、我々の主要目的であるので、「おおむね順調」と判断した。 また、NRSFとmSin3の系の複合体形成の時系列を、カノニカル分子動力学で追跡できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本領域全体の研究目標には、天然変性蛋白質研究を通じで創薬を行うことが挙げられている。そこで、全原子McMD法を用いて、mSin3とそれに結合する小分子(創薬のターゲットとなりうるもの)のシミュレーションする予定である。明石計画班の西村(横浜市立大)との共同研究になる。
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Research Products
(6 results)