2012 Fiscal Year Annual Research Report
窒素制限条件下の光合成機能と生産性に与える高CO2環境の影響の解明
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
21114003
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小俣 達男 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50175270)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
愛知 真木子 中部大学, 応用生物学部, 講師 (00340208)
前田 真一 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70335016)
|
Project Period (FY) |
2009-07-23 – 2014-03-31
|
Keywords | 植物 / 環境 / 二酸化炭素 / 生産性 / 光合成 |
Research Abstract |
1. モデル植物の硝酸イオン輸送変異株のCO2応答の解析 シロイヌナズナのNRT変異株を利用して実現した「恒常的窒素制限状態」の植物体を高CO2条件下におくと窒素欠乏様の症状が顕在化するが、この現象を地上部におけるC/N含量比の有意な上昇から裏付けた。窒素欠乏様症状のうちアントシアニンの蓄積は、マイクロアレイ解析によってアントシアニン合成関連遺伝子の発現の上昇と対応づけられたが、昨年度の結果と同様に、それ以外の遺伝子の応答は既知の窒素欠乏応答と大きく異なっていた。また、主要代謝物レベルを調べたところ、37代謝物の高CO2に応答した有意な変動が見られたが、これらは野生株と変異株の間で有意な差は認められなかった。以上から、NRT変異株は制限された窒素を優先的に使用することにより、主要代謝経路を野生株と同様のレベルに維持しているものと結論した。 2. 野生植物の窒素感受性の解析 昨年度に引き続き、モウセンゴケ属植物の高CO2応答についての研究を進め、低窒素および高窒素条件における高CO2の影響を比較解析した。低N条件下では高CO2により、モウセンゴケ(Dr)とトウカイコモウセンゴケ(Dt)で葉齢の高いロゼッタの枯死が促進され、若葉が残存・成長したものの葉長の総和は低下した。一方、高硝酸培地で観察される高窒素感受性は高CO2により緩和され、Dr, Dtの生存率は上昇し、およそ20日程度生存期間が延長した。この時、葉長の低下も抑制され、特にDtにおいて顕著であった。以上の結果から、モウセンゴケ属Dr, Dtにおいては、低N条件では高CO2による老化の促進と成長抑制が起こるが、高N条件ではこれらが緩和されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、モウセンゴケの窒素感受性に対する高CO2の影響に関する知見を深化させるため、CO2濃度制御のための植物栽培用人工気象器の利用をモウセンゴケ優先にした。そのため、シロイヌナズナを用いた研究に約半年間の遅れが生じているが、その点を除けば、全体として研究は当初計画通りに進行している。CE-TOFMSを用いた主要代謝産物の解析から「恒常的窒素制限状態」の植物が、主要代謝経路の高CO2応答を窒素十分状態の植物と同様に維持するために、制限された窒素を優先的に使用していることを明らかにできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
恒常的窒素制限状態におけるモデル植物の高CO2応答の解析については、メタボローム解析のデータを精査し、恒常的窒素制限状態の植物の高CO2応答のマーカーとなるような特徴的な変動を見せる代謝物の探索を行う。モウセンゴケ属の中でもっとも高い窒素感受性を示すモウセンゴケ(Dr)に見られる亜硝酸イオンの蓄積の原因を解明するため、本年度は硝酸還元酵素、亜硝酸還元酵素の活性とタンパク量を分析したが、再現的な結果が得られなかったので、来年度は、より精度の高い遺伝子発現レベルの分析を中心にして研究を実施する。
|
-
-
[Journal Article] CmpR is important for circadian phasing and cell growth.2012
Author(s)
Tanaka, H., Kitamura, M., Nakano, Y., Katayama, M., Takahashi, Y., Kondo, T., Manabe, K., Omata, T. and Kutsuna, S.
-
Journal Title
Plant and Cell Physiology
Volume: 53
Pages: 1561-1569
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-