2011 Fiscal Year Annual Research Report
高CO2環境がイネの光合成とバイオマス生産に与える影響の解明
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
21114006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 周 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (70181617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 雄二 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (80374974)
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Keywords | 高CO2 / イネ / 光合成 / バイオマス / Rubisco / RBCS遺伝子ファミリー |
Research Abstract |
イネ葉身において主要に発現しているRBCS遺伝子4分子種を個別にRNAi法にて発現抑制した形質転換体イネを作製した。RBCSのmRNA量が特異的に著しく減少し、Rubisco量が野生型の10-30%程度減少していた。このように、イネにおいて主要に発現しているRBCS遺伝子はいずれもRubiscoタンパク質の蓄積に貢献しており、1分子種の発現が抑制されても他の分子種により補償されないことが明らかになった。また、total RBCS mRNAとRBCL mRNA量との間に正の相関関係が認められ、両サブユニットの遺伝子が協調的に発現していることもわかった。次に、これら変異体の高CO2条件での生育を検討した。RBCS4とRBCS5のRNAiの2系統が、高CO2条件(100Pa)で野生型の生育を有意に上回る系統として選抜された。現在、これら系統の遺伝背景を安定させるため、戻し交配を行っている。 一方、Rubisco量の増強は現在のCO_2レベルでの光合成やバイオマスの増産にも明確な効果はなかった。要因は、Rubiscoの量的増加が認められた相当分だけ、生体内ではRubiscoの不活性化が生じていることであった。そこで、Rubiscoの光合成における律速性が高まる低温環境(19/16℃:day/night)および低CO_2分圧(28Pa)下でRBCS過剰生産イネを栽培し、より低温、低CO_2環境に積極的に応答していると判断された。63日目の総バイオマス生産評価でも、RBCS過剰生産イネがWild-type系統のバイオマス生産を有意に越えていて、低温条件さらには低CO_2条件で促進されていた。現在、窒素の総吸収量を調べ、窒素利用効率を評価している。その他、デンプン合成の鍵酵素、葉身プラスチッド型AGPase(OsAPL1)の欠損イネ(Tbs17挿入系統)の生育を調べた。現在は、それらのBC_2F_1を栽培中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
震災の影響で、全サンプルの消失、栽培中のイネの枯死の被害があり、多くの実験がやり直しとなった。しかしながら、6月末には、実験環境はほぼ復興し、その後は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高CO_2で選抜されたRBCS2とRBCS5のRNAiの2系統について、Wild-typeのバッククロスを進め、純化を進める。また、それらの系統の詳細な光合成機能を調べる。具体的には、着葉レベルでのガス交換・クロロフィル蛍光・P-700吸収の同時解析と全電子伝達フラックスの解析を行う。次に、それらの高CO_2環境下(80と120Pa)における成長解析を行い、個体レベルでのバイオマス生産評価を行う。合わせて、窒素吸収量も求め、窒素利用効率から評価を加える。PETCの作製を続け、それらの組換体の詳細な光合成特性を調べ、選抜されたRBCS4とRBCS5のRNAi系統との交配を試みたい。
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