2012 Fiscal Year Annual Research Report
Parameterization of photosynthesis and xylem formation of woody plants grown under FACE
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
21114008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 孝良 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10270919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 冬樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (20187230)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高CO2 / 開放系大気CO2増加 / 個葉光合成 / 葉面積指数 / 窒素動態 / カンバ類 / 葉のフェノロジー / 生産力 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子生物~地球生理生態モデルのコンソーシアムの中で、主に光合成・呼吸と気孔コンダクタンスに関する生理生態レベルの野外モデル研究を遂行する。アジアで唯一の樹木を対象にしたFACE(開放系大気CO2増加実験)を用いて、越境汚染を含む窒素負荷が樹木個体群に及ぼすモデルパラメータを野外実験から提供する。具体的には、気孔開閉のメカニズムを分子生理レベルの情報を得つつ生理生態データ(葉量と光合成関連データ)の推移を個葉・個体・群集レベルへとCNバランスから評価する。CO2の影響は、先行研究から土壌の栄養条件の影響を大きく受けることが指摘される。世界には温帯と針葉樹林帯の移行帯森林が3ヶ所に広がるが、本邦のそれらは脆弱であり変化が最も明瞭に現れる地帯と位置づけられる。その上、土壌条件が異なるので特徴ある火山灰土壌に注目する。また、カラマツ属バイテク苗を使用して森林レベルのCO2固定とCNバランスを詳細に解析する。対象とする植物は、成長が早くCO2貯留能の高いカンバ類とグイマツ雑種F1である。CO2付加2年目とは異なり、CO2処理による単位面積当たりの葉面積(LAI)の増加はシラカンバでのみ見られ、先に述べたようにダケカンバとウダイカンバではLAIの明瞭な増加は観察されなかった。シラカンバでは7月末にLAIの有意(p0.05)な増加が認められた。この時期のシラカンバのLAIの垂直分布(7月)では地表面から3mまではCO2処理の有意な影響はなかったが、高CO2区では葉の分布が上層(高さ3.5m以上)まで拡大していた。吸光係数は(K)は,対照区で0.59(±0.031),高CO2区で0.71(±0.007)となり,高CO2区で有意に大きくなった。シラカンバの7月末における葉面積当たりの窒素含量(Narea)は高CO2区で高い傾向であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道大札幌研究林に設置されたFACE(開放系大気CO2増加)装置を用いて行った。土壌は褐色森林土で、対照区(CO2無付加、370-380 ppm)と高CO2区(500 ppm、2040年頃を想定)の2段階のCO2処理区を設定した。カバノキ属3種の2年生苗を2010年6月から栽培し2012年に本調査を行った。2012年5月と11月に地際直径(D)と樹高(H)を測定した。6月から10月の期間に、3週間に1回の頻度で、各樹種の樹冠のLAI、相対光強度、葉の窒素含量を高さ50 cm毎に測定した。2012年7月下旬から8月上旬に各樹種の樹冠の様々な位置で光-光合成関係と窒素含量を調査し、窒素含量を指標とした光-光合成関係のモデリングを行った。得られた光合成モデルと、葉群の高さ別LAI、光強度、窒素含量を用いて、葉群全体の光合成と呼吸によるCO2収支を計算した。 2012年5月~11月における個体の成長量(D2H)は、ダケカンバとシラカンバでは高CO2区で有意に増加したが、ウダイカンバでは増加しなかった。また、葉群のCO2収支に関しても個体成長と同様の傾向が認められ、ダケカンバとシラカンバのCO2吸収量(光合成量-呼吸量)は高CO2環境で増加する傾向を示した。一方で、ウダイカンバにおいては、呼吸による炭素放出量が高CO2で増加する傾向を示したため、高CO2環境でもCO2吸収量はあまり増加しなかった。ウダイカンバ個葉における呼吸速度と窒素含量の関係から、同じ窒素含量で比較した場合、高CO2区において呼吸速度が高かった。この事がウダイカンバ葉群の呼吸量を増加させた一要因であると考えられる。葉のLAIおよび窒素含量は、いずれの樹種においても高CO2による明確な影響は見られなかったことから、個葉の光合成、呼吸における窒素利用の樹種間差異が、葉群CO2収支に影響を及ぼしている事が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
CO2付加2年目とは異なりCO2処理による単位面積当たりの葉面積(Leaf Area Index: LAI)の増加はシラカンバでのみ見られ,先に述べたようにダケカンバとウダイカンバではLAIの明瞭な増加は観察されなかった。シラカンバでは高CO2処理で7月下旬のLAIが増加した。これは,高CO2処理による樹高成長の増加に伴ってシュート(枝+葉)をより多く展開させたためであると考えられる。しかし,LAIの増加は一時的であり8月中旬には対照区との間に有意な差は見られなかった。LAIと吸光係数の両方が高CO2処理によって増加したことから、高CO2区では樹冠下部の光環境が悪化したと言える。その結果、高CO2区の樹冠下部で落葉が進行し、8月中旬には対照区と高CO2の間に有意差が見られなくなったと考えられる。高CO2区では対照区より葉面積当たりの窒素含量(Narea)が高い傾向にあった。そこで、もしこれらの窒素がクロロフィルなどの集光部位に多く配分され,その結果として光補償点が低下するならば、樹冠下部での葉の維持が可能となる。この点を調査したい。本研究の結果、高CO2環境におけるLAIの動態には種間差があることが明らかになった。このことから、同じカバノキ属の中でも将来の高CO2環境による炭素貯留・成長の増加に差が出ることが考えられた。高CO2では気孔が閉鎖気味になるので、葉内CO2濃度が低下し、その結果、光阻害の生じる可能性もある。そこで、葉温をモニターしながら、クロルルフィル蛍光反応を調べて高CO2環境での個葉レベルでの機能評価も合わせて行う。また、これらの違いが将来の森林の更新・樹種構成に影響することも予想される。これらを最終年に向けて、1つずつ検証していきたい。
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Remarks |
分野の異なる研究者が緊密なコンソーシアムを形成し、表現型パラメータと環境応答の分子機作の同時解析によって、植物の高CO2応答を解明する。この情報交換とアウトリーチの活動はこのHPにて行います。
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Research Products
(14 results)