2012 Fiscal Year Annual Research Report
Meta-analysis and model development on plant high-CO2 response
Project Area | Comprehensive studies of plant responses to high CO2 world by an innovative consortium of ecologists and molecular biologists |
Project/Area Number |
21114010
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
伊藤 昭彦 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (70344273)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 植物生理生態 / メタ分析 / プロセスモデル / 炭素循環 / 生物圏 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
植生機能を特徴付けるパラメータとして最も重要なものの一つである葉面積指数について、木本植物を対象に文献値を収集して気候条件や植生タイプとの関連性を解析するメタ分析を実施した。温度と水分条件に対する葉面積指数の応答がグローバルスケールで明らかになり、その成果を論文にまとめて投稿した。さらに植物の窒素・リンのストックとフローに関するメタ分析も開始しデータ収集を進めている。 植物の生理生態プロセスに基づくモデルの高度化に向けた試行を行った。高CO2環境下での植物応答において制限要因となり得る窒素の利用可能性をモデルに取り入れるため、根系からの窒素吸収の定式化を検討した。土壌中の無機窒素量だけでなく、植物の窒素要求量と細根量を考慮したスキームを導入することでモデルの再現性が高まると考えられた。このような高CO2条件下での窒素利用に関しては、東北大学グループと共同研究を行うことで進められた。また、葉でのCO2固定速度における制限要因となりうる葉肉抵抗は、高CO2条件下で変化することが観察されているが、その可能な影響程度についてモデルを用いた予備的な評価を行った。 今後の大気CO2濃度シナリオを用いた予測シミュレーションを行うことで、大気CO2増加と気候変動が陸上生物圏に与える影響と、それが気候システムにもたらすフィードバック効果について検討を行った。最近のIPCC第5次評価報告書に採用されたシナリオ間・モデル間で比較を行ったところ、なおモデル間でCO2応答の推定不確実性幅は大きく、今後のさらなるモデル改良の必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトにおいて、東北大学や海洋研究開発機構、静岡大学の研究グループと共同研究を行うことで当初の目論み通り他分野にまたがる連携を進展させることができている。メタ分析については、大量の文献データ収集に時間を要したが、論文化を急いだことで今年度内に投稿をおこなうことができた。また、モデル開発利用に関しては、既存の陸域生態系モデルを用いることで効率的な数値実験と解析を実施できている。一方、ゲノム情報などミクロスケールの知見をモデルに取り入れる検討を進めているが、それについては具体的なモデル構造改良には至っておらず、引き続き今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度より、国際的な陸域生態系のモデル間相互比較プロジェクトに参加しており、そこで行われた大気CO2濃度増加実験の結果を用いることで、陸域モデル間での環境応答に関する推定不確実性のより一般的な定量化を実施したい。特にCO2応答と温度覆う等の相互作用とその分離に注目する。それにより、本プロジェクトの成果を適用することでモデル推定信頼性および温暖化予測精度の向上可能性を示し、同時に研究成果の国際コミュニティへの提示を積極的に行いたい。同時に、研究成果の学術論文としての集成により注力し、メタ分析とモデルの両面でプロジェクトの成果をとりまとめる方針である。 モデル高度化のための共同研究をより進展させるため、コンソーシアムで進行中の各研究班の状況を積極的に取材し、可能な限り陸域モデルに反映させられるよう研究を進める。特に、大気CO2増加に直接応答を示す気孔開度や光合成同化については、研究班のミクロスケールの成果を導入する戦略を検討し、これまでに無いアプローチで生態系モデルの高度化が達成されるよう検討を進める。同時に、各種の学会で学術集会を企画して成果のアピールに努める。
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