2009 Fiscal Year Annual Research Report
病原体センサー活性化に伴う選択的遺伝子発現誘導機構とその破綻
Project Area | Homeostatic inflammation: Molecular basis and dysregulation |
Project/Area Number |
21117004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牟田 達史 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (60222337)
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Keywords | 病原体センサー / 遺伝子発現 / シグナル伝達 / 炎症 / 慢性炎症 / 皮膚炎 / NF-κB / IκB-ζ |
Research Abstract |
微生物由来成分によって活性化される病原体センサーは、自己由来の内因性物質をも認識すること、さらにその過度の活性化が種々の慢性炎症性疾患の病態に寄与することが最近認識されつつある。研究代表者が発見したIκB-ζ(zeta)は、自然免疫刺激時に発現誘導され、炎症応答の選択的遺伝子発現の鍵を握る分子である。IκB-ζ遺伝子欠損マウスは、SPF環境下で皮膚や眼瞼結膜に慢性炎症を自然発症する。本研究は、IκB-ζ欠損マウスで観察される慢性炎症の原因と特異的発現機構の解析及び、死細胞に対する細胞応答の解析を介して、恒常性維持における炎症応答制御の分子機構と生理的意義の解明を目指すものである。 IκB-ζ欠損マウスの詳細な病理解析の結果、今回新たに、皮膚に加えて涙腺に強い炎症が観察されることを見出した。さらに、血清中に抗SSA/SSB自己抗体が検出されることが明らかになり、このマウスの症状は、原因不明のヒトの自己免疫疾患の一種であるシェーグレン症候群の示す病態に類似していることが判明した。IκB-ζ/tumor necrosis factor-α二重遺伝子欠損マウスを作製したところ、IκB-ζ単独欠損マウスと慢性炎症症状に大きな変化は観察されず、このマウスの示す病態は、従来報告されているNF-κB関連因子の欠損によるtumor necrosis factor-α依存性の皮膚炎症とは異なることが明らかになった。一方、Rag2欠損マウスとの二重遺伝子欠損マウスを作製したところ、顕著な症状がほぼ消失し、リンパ球の存在が発症に重要であることが判明した。さらに、IκB-ζ欠損造血細胞をもつ骨髄キメラマウスを作製したが、このマウスでも症状が観察されず、この自己免疫疾患を伴う慢性炎症は、放射線抵抗性の皮膚等に局在する細胞と獲得免疫系の細胞の両者が関与した機構を介して発症することが明らかになった。
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