2010 Fiscal Year Annual Research Report
病原体センサー活性化に伴う選択的遺伝子発現誘導機構とその破綻
Project Area | Homeostatic inflammation: Molecular basis and dysregulation |
Project/Area Number |
21117004
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牟田 達史 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (60222337)
|
Keywords | IκB-ζ / 遺伝子発現 / シグナル伝達 / 炎症 / 慢性炎症 / 自己免疫疾患 / NF-κB / シェーグレン症候群 |
Research Abstract |
研究代表者らが発見したIκB-ζ(zeta)は、自然免疫刺激時に発現誘導され、NF-κBを制御することにより、炎症応答の選択的遺伝子発現の鍵を握る分子である。IκB-ζ遺伝子欠損マウスは、specific pathogen-free環境下で皮膚や眼瞼結膜に慢性炎症を自然発症する。本研究は、IκB-ζ欠損マウスで観察される慢性炎症の原因と特異的発現機構の解析及び、死細胞に対する細胞応答の解析を介して、恒常性維持における炎症応答制御の分子機構と生理的意義の解明を目指すものである。 昨年度までに、IκB-ζ欠損マウスで自然発症する慢性炎症にはリンパ球の存在が必須であること、さらにIκB-ζ欠損マウスでは、皮膚に加えて涙腺に強い炎症が観察されること、血清中に抗SSA/SSB自己抗体が検出されることを見出し、このマウスの症状は、原因不明のヒトの自己免疫疾患の一種であるシェーグレン症候群の示す病態に類似していることを示した。今回、この病態の発症機序を探る目的で、野生型及びIκB-ζ欠損マウスから脾臓細胞を調製し、成熟リンパ球を欠くRag2欠損マウス及び、Rag2/IκB-ζ二重遺伝子欠損マウスに移植し、炎症発症の有無を観察した。その結果、IκB-ζ欠損マウス由来脾臓細胞を移植したRag2欠損マウスでは、発症が観察されないのに対し、野生型マウス由来脾臓細胞を移槙したRag2/IκB-ζ欠損マウスではIκB-ζ欠損マウスと同様の炎症が発症することが明らかになった。これらの結果より、IκB-ζ欠損に伴うリンパ球機能の変化が炎症発症の原因ではなく、リンパ球以外の細胞におけるIκB-ζ欠損により、組織の恒常性が破綻し、慢性炎症が発症することが判明した。
|